全部、私からだった。 ~AfterStory~
その中から主任が、勿体つける様にゆったりと取り出したのは――
私のキーケース。
その安っぽい革製のシンプルなデザインは見紛うはずもなく。
「え? あ、ありがとうございます」
安堵よりも驚きの方が大きくて、しどろもどろに礼を言いながら受け取った。
「まったく、うっかりさんにも程があるでしょう?
だいたいねぇ、あなたは普段から集中力が足りなさ過ぎなのよ。
それなのに、自己主張だけは一人前、そんなことじゃ……」
「これ、どこにあったんですか?」
延々続きそうなお説教を遮って尋ねた。
主任は片眉をヒクリと上げて、不快だと言わんばかりに目を細めて私を見る。
「トイレの手洗い場に置いてあったのを、荒井さんが見付けて届けてくれたのよ」
溜息混じりに教えてくれた。