全部、私からだった。 ~AfterStory~


 荒井さんとは、シルバー人材センターから派遣されている、お掃除のおばさん――というか、お婆ちゃんだ。

 昨日、私は退社前にトイレへなんか行っていない。

 どういうこと?



「しっかりしなさいな。
 もう少し、指導する立場だという自覚を持ってちょうだい。
 あなたに足りないのはそこだけ、あとは完璧だから」

 思いがけず唐突に褒められ、驚いてマジマジと主任の顔を見てしまった。
 彼女は柔らかい笑みを浮かべていて、目尻の皺がやけに目に付いた。


「あなた、生徒さんたちには凄く評判いいのよ」

 言った主任の目尻の皺は、益々深く刻まれる。


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