全部、私からだった。 ~AfterStory~
廊下の左手に扉が三つ、等間隔で並んでいた。
一番奥まで来てようやく彼女は立ち止まり、目の前のドアをそっとノックして、遠慮がちな音を鳴らした。
中から返事はない。
けれど、すぐにカチャリと小さく音を立ててレバー式のドアノブが上下し、ゆっくり扉は開かれた。
赤根くんが中から顔を覗かせ、私をその視界に入れると、嬉しそうに顔をくしゃりと綻ばせた。
まただ。
また、居心地の悪さを感じて、気分がすこぶる悪い。
胸の奥もムカムカして来た。
何も食べて来ていないのに、胃がやけに重たく感じる。
「先生、待ってました。
中、入って」
赤根くんはそう言って、私の手首を優しく掴むと、部屋の中へと引き入れた。