全部、私からだった。 ~AfterStory~


「え、えっとぉ。
 私みたいな下々の者がこんな生活、きっと落ち着かないっていうか……
 何て言うんだろ?」

 わざとらしく笑ってみたけれど、乾いた声しか出て来ない。
 そして、焦燥しきって訳のわからない事を言う私は、とんでもなく間抜けだ。


「冗談だよ、先生。
 何? 『下々の者』って」

 赤根くんは可笑しそうに笑う。

 何だ冗談か、びっくりした、心臓止まるかと思った。


「ほんとに先生って――


 可愛いよね」


 え?


 赤根くんはうっとりと私を見詰め、彼のしなやかな指が私の髪に触れた。
 それは、すぅっと緩やかに後髪の中へと滑り込み、うなじの少し上に添えられる。


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