全部、私からだった。 ~AfterStory~


 何が起こっているのかさっぱりわからず、茫然と見上げていると、背の高い赤根くんがほんの少し身を屈めた。
 そうして、その顔がゆっくりと近付いて来る。

 メガネのレンズ越しに見える彼の瞳の中には、酷く怯えて、今にも泣きだしそうな私が居た。


 逃げ出したいけれど、赤根くんなんか突き飛ばしてやりたいくらいだけれど、身体がガチゴチに固まってしまって動くことが出来ない。

 唯一自由が利く瞼を、ギュッと固く閉じた。

 心臓が有り得ないほど激しく躍動していて、それがやかましいぐらい全身に響く。


 もう、どうしよう。
 どうして私がこんなことに?

 経験値の少ない私の思考は、この緊急事態について来られず大パニックだ。



 フッ――
 と。

 右の頬に小さな風がぶつかったような感覚。


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