全部、私からだった。 ~AfterStory~


 恐る恐る瞼を持ち上げれば、まだ赤根くんの顔は目の前にあって。

 伏せ目がちに私を見下ろすその眼差しは、怖いぐらいの色気があって、身体の芯部がゾクリとする。


 何なのこれ、もう本当に勘弁して欲しい。
 鼓動がうるさい、顔が熱い。


 そんな私の動揺っぷりが可笑しかったのか、不意に、赤根くんは口元を緩めて悪戯っぽく微笑んだ。
 
 驚いて目を見張る私に、

「睫付いてた」

 悪びれることなくサラリと言い放ち、赤根くんは愉しげに声を漏らして笑った。


 からかわれているのだと、ようやく悟る。
 私をからかって楽しんでいるのだ。

 こんな年下の男の子に、いいように気持ちを弄ばれて。
 赤根くんは高校一年生だ、ほんの一年前は中学生じゃない。


 悔しくて、情けなくて、泣きたくなった。


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