全部、私からだった。 ~AfterStory~


 コツコツと、控え目なノック音が部屋に響く。
 ようやく私は、ついさっきまで一緒に居た、母親のハインリーケさんが見当たらないことに気付いた。


 赤根くんがチッと舌を鳴らし、その音に驚いて彼に視線をやれば、露骨に顔を顰めている。

 何故なの?

 そうして返事もせず、扉を開けようともしない。
 益々不信感が私の中で積もる。



「あ、私が開けるね」

 平静を装って言い、扉へ向かった。

 そっとドアを開けるとそこに、立っていたのはやっぱりハインリーケさんだった。
 金色に縁取りされた上品な花柄のお盆を両手で持ち、その上にはティーカップ二つとクッキーの入ったお皿がのっていた。


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