勿忘草~私を忘れないで~
花好きな野郎
暇だった、と言えば悪い言い方だけど、
そうなった愛生は花を刺繍したり、描いたりしてたらしい。
ハナショウブ。これは『嬉しい知らせ』や『あなたを信じる』と言いたかったんだろう。
ヤドリギは『困難に打ち勝つ』『忍耐強い』そして『征服』。
他にも、シオン、ベンケイソウ、中には『不老長寿』何て言うマツ。
でも、やっぱり一番多かったのは勿忘草。
必死になって、花言葉で相手に意思を通そうとしていたんだ。
それなのにな………。
見上げた青空にいる、なんて昔は思ってた神様にさえ、通じなかった。
「よ、久しぶり!」
見ると、歌奈がいる。
「お前、荒れすぎ」
「みーんなこうだもん」
よく聞く言い訳。
あー、神様、コイツの願いは別に聞かなくってイイから。
「それより、途中にこんなの発見」
と言って見せたのは、小さな赤い実が沢山着いた枝。
「勝手に取るんじゃねえ!」
「バカは知んないね。
これ、サネカズラ。『再会』って花言葉」
ぴったりでしょと胸を張ってたけど、イマイチビミョーすぎる。
だって、こんなちっちぇえ実なんてさ……
「あ、成留捨てんなよ」
と、ポイ捨てしようとした俺に、キツクなった口調で言われてしまった。