理不尽な女神さま
「ミナト!」
「あっ、夏澄。来たな」
「当たり前!」
午後10時。
まだライブハウスは灯りをともす。
だけど寒い中待っててくれた彼を
これ以上この寒さにさらすことはできない。
あたしは片付けを終えると外で待っていてくれた彼・・・
そう。
付き合って3年の恋人の篠原 ミナトのもとへ駆けた。
「今日どうだった~?」
「ん。相変わらず良かったよ。なんか・・・安心した」
「えー?」
「夏澄は・・・ちゃんとやってけるなって、思った」
今日のミナトは変だ。
返事もそっけない。
何かをほのめかすような物言い。
嫌だ。
嫌な予感がする。
本能?女の勘?
・・・分からない。
根拠のない予感が、心を疼く。
「ここで・・・いいかな」
ミナトが歩いて連れてきたのは夜景スポット。
あたしたちはココで始まった。
出逢いも、付き合い始めたのも、デートも。
ここで思い出を塗り替えてきた。
「夏澄・・・別れよ?」
「・・・っ」
どうして、なんて言えなかった。
ミナトがあたしを見つめる目が、あまりにも綺麗だったから。
あまりにも・・・
愛しそうに見つめてくれてたから――。