理不尽な女神さま


「夏澄を嫌いになったとかじゃない。
夢を追う夏澄も、俺を愛してくれる夏澄も、愛してる。
でも・・・俺は夏澄を幸せにできない。
この先・・・一緒に居られない」


静かに言い放たれた言葉に、どうすることも出来ない。

キラキラ輝くのは思い出なのか、涙なのか。

それとも夜景なのか、幻なのか。

・・・いいや。

そうであってほしい。

決して涙ではないであってほしい。

そう思っても・・・止まらない。


「あたしは・・・」

「・・・夏澄」


あたしの言葉をさえぎるミナト。

いつもより強引に、抱きしめられた。


「今日ライブ見てて、思った。・・・俺は、夏澄が好きだって・・・。
多分、一生忘れないって。・・・でもな、それと同時に思った」


ミナトは抱きしめた腕を緩め、あたしの頬に手を添えた。


「夏澄は強い。・・・だから、俺が居なくても大丈夫だって」


分からない。

どうして別れるの?

愛してるなら、忘れられないなら・・・

どうしてそんなこと言うの?

答えを知る由もなかった。


「・・・じゃあな。」


ミナトはあたしの頭を撫でて去って行った。

最後に「元気でな」と言って。

あたしは立ちすくむ。


「あたしは・・・」



「あたしは幸せになりたくなんてない・・・。
ミナトの傍以外に、あたしの幸せなんて無いのに・・・」



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