理不尽な女神さま


「・・・ああ、あなたなんですか。」

「『ああ』じゃない!なんでお前が出たんだ!?
俺は珠紀という女にかけたはずだぞ!?」

「ただ番号間違えただけですよ。・・・あなたが」

「なっ・・・!?」


初めて馬鹿にされた、かのような顔をする男。


「そんな女に会いたきゃキャバクラへでも行けっつーの」

「なんだと!?」

「こちとらイライラしてんの!もう帰ってください!」

「おま・・・っ!こんなに馬鹿にされたのに言い返さずに帰れるか!」


なんていう小学生みたいな言い草だよと思う。

でもつい口から出てしまったものは取り返しがつかない。

あたしのボヤキも全て遅し。


「タマオだか玉屋だか知りませんけどね、あたしはあなたのせいで
一時間無駄にしたんです!それに折り返しかけても無視だし。
自分中心に世界が廻ってるとでも思ってんですか!?
冗談じゃない!」

「・・・ふっ」

「あっ・・・」


あたしは、ものすごく恥ずかしくなった。

かなり取り乱した上に、男は鼻で笑ってる。

しかもすごくきれいに笑う。

悔しい。


「・・・お前、名前は?」

「加瀬、ですけど・・・」

「それは苗字と言うんだぞ?名前を教えろ」


なんだか馬鹿にし返された気分だ。


「なっ・・・夏澄っ」

「俺は新堂グループの社長、新堂和葉だ。」

「しっ・・・新堂グループ!?社長!?」


新堂、と言えば世界有数の財閥であり、
ファミレスのチェーン店やSNSを運営する会社だ。

あたしはそんな人に暴言を浴びせていたのか。

急に自分が恐ろしくなった。



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