優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃の乱
“時空屋”。


両親はそんな仕事をしていた。


――オーパーツ。

その時代には存在しない未来的な工芸品…

それがある日時空の間に落ちてしまい、時代が狂う。

年表通りのことが起きなくなり、時代が変わってしまう。


両親はそんなオーパーツを時代を遡って回収し、正しい歴史が紡がれるようにいつも時空の旅をしていた。


そんな両親も、今は――…


「桃―、何回言わせればわかるのー!?」


階下で長女の桜の怒った声が聞こえて、桃は慌ててベッドから起きあがった。


「やばっ、こんな時間!」


慌ててリビングに駆け込むと、そこには家族全員がすでに集合していて食卓についていた。


長女の桜

次女の小梅

三女の苺

四女の蜜柑

そして五女の桃。


末っ子の桃が17歳で、あとはみんな年子。

揃いも揃ってかしましい女所帯。


「はい、お祈りしてからご飯ね。お父さんお母さん、今日も私たち姉妹は5人で協力し合って頑張ります!」


仕切り屋の桜が手を合わせて言うと、5人はそれに倣い、パンをかじりだした。


「あら、ネックレスつけてないじゃない。駄目よ、お母さんたちの形見なんだから」


四女の蜜柑に指摘されて、桃は自分の首に手をあててそれがないことに気がついた。


――両親は居ない。もうずっと会っていない。

それはまだ桃が10歳の時だった。


遺されたのは、両親が身につけていた『時空を飛べるネックレス』。
トップには金色に輝く大きな石がついていた。


大きな石を欠片にして姉妹で分けて、肌身離さず身につけている。

割ったせいかもう時空を飛ぶことはできない。
というよりも、彼女たち全員は飛ぶ方法を知らなかった。


だが、オーパーツが過去の世界に紛れ込んだ時、
その石が輝いたのを見たことがある。
両親はそういった時急いで支度をして、居なくなった。


「形見なんだから外すんじゃないわよ」


「んー、わかった!学校行って来るね!」


――桃は急いで制服に着替え、ネックレスをつけて家を後にした。


「…?」


肌に触れた石が、熱くなったような気がした。
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