優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成の屋敷へ戻ると、庭でそわそわしていた幸村が真っ先に駆けてきて輿の前でひざまずいた。
「昨晩は急にお出かけになった後音沙汰なく…心配いたしました!」
「あ…幸村さんごめんね?ちょっと急用があって…」
三成から手を引かれて輿から出て来た桃の盛装を見た幸村がぽーっとなると、剣の鞘でやや強く三成が幸村の肩を叩いた。
「大山と話をして来る。桃は部屋で…じっとしていろ」
――背を向けて去って行った三成の代わりに幸村が手を差し延べると桃が素直に手を預けてきたので、庇護欲を強く刺激されながら手を引くと…
「姫、戻って来たんだね」
――いつの間にそこに居たのか…
客間の障子に寄り掛かり、腕を組んだ謙信がやわらかく声をかけてきた。
…キスをされてからぶりの顔合わせとなった桃は、初恋の相手と言っても過言ではない謙信が手招きをしてきたので、幸村を見上げて少し頬を赤らめながら手を放した。
「私…謙信さんにお話があるから…」
「ああ、では拙者は席を外します故御用の際はお呼び下さい」
「うん、ありがとね幸村さん」
謙信が少し意地悪げに笑んだのが気にかかったが…足早に居なくなった幸村を見送り、桃は謙信と二人きりになった。
「…」
「………」
「ふふ、緊張しているね?」
縁側の隣に座っている謙信をまともに見ることができない。
「姫、三成に告げ口しちゃった?私は別に宣戦布告してもいいんだけれど…姫には迷惑に思われたくないから少し不安だよ」
不安と言いながらも晴天を気持ち良さそうに見上げて瞳を閉じた謙信の横顔に、桃は思わず見入ってしまっていた。
「そんな…冗談やめて下さい…謙信さんは生涯独身で…」
「史実ではそうなっているの?私は仏に身を捧げようと思っていたけれど…天女ならば別だよ。私と結縁する?」
「けちえん?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、膝に乗せていた手にそっと手が重なってきた。
「私のものになってくれるか…という意味だよ」
――重なった手はあたたかく優しく、けれど三成とはまた少し違う。
とても血にまみれた手とは思えない。
「昨晩は急にお出かけになった後音沙汰なく…心配いたしました!」
「あ…幸村さんごめんね?ちょっと急用があって…」
三成から手を引かれて輿から出て来た桃の盛装を見た幸村がぽーっとなると、剣の鞘でやや強く三成が幸村の肩を叩いた。
「大山と話をして来る。桃は部屋で…じっとしていろ」
――背を向けて去って行った三成の代わりに幸村が手を差し延べると桃が素直に手を預けてきたので、庇護欲を強く刺激されながら手を引くと…
「姫、戻って来たんだね」
――いつの間にそこに居たのか…
客間の障子に寄り掛かり、腕を組んだ謙信がやわらかく声をかけてきた。
…キスをされてからぶりの顔合わせとなった桃は、初恋の相手と言っても過言ではない謙信が手招きをしてきたので、幸村を見上げて少し頬を赤らめながら手を放した。
「私…謙信さんにお話があるから…」
「ああ、では拙者は席を外します故御用の際はお呼び下さい」
「うん、ありがとね幸村さん」
謙信が少し意地悪げに笑んだのが気にかかったが…足早に居なくなった幸村を見送り、桃は謙信と二人きりになった。
「…」
「………」
「ふふ、緊張しているね?」
縁側の隣に座っている謙信をまともに見ることができない。
「姫、三成に告げ口しちゃった?私は別に宣戦布告してもいいんだけれど…姫には迷惑に思われたくないから少し不安だよ」
不安と言いながらも晴天を気持ち良さそうに見上げて瞳を閉じた謙信の横顔に、桃は思わず見入ってしまっていた。
「そんな…冗談やめて下さい…謙信さんは生涯独身で…」
「史実ではそうなっているの?私は仏に身を捧げようと思っていたけれど…天女ならば別だよ。私と結縁する?」
「けちえん?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、膝に乗せていた手にそっと手が重なってきた。
「私のものになってくれるか…という意味だよ」
――重なった手はあたたかく優しく、けれど三成とはまた少し違う。
とても血にまみれた手とは思えない。