優しい手①~戦国:石田三成~【完】
夜、宴が催された。
謙信は一人盃を傾けるのが好きなのか、障子を開けて空を見上げながら酒を呷る。
「姫と越後へ共に来るらしいね。君は必要ないんだけどなあ」
「桃を預かっているのは私の役目。口出しは無用にて」
ぴしゃりと断った三成に苦笑が沸いた謙信と三成の顔を桃は交互に見ながらぽかんと口を開けた。
「えっ?三成さんも越後に来てくれるのっ?」
「秀吉様にもお許しを頂いた。長居はできぬが…」
「うんっ、ありがとう!よかったあ、心細かったから嬉しい!」
予想以上に喜んでくれた桃に瞳を細める三成に対し、
幸村は“自分には頼ってくれないのか”と内心落ち込み、
兼続はまんまと手中に飛び込んでくる桃にほくそ笑み、
謙信はいつものように微笑していた。
「心行くまで居るといいよ。城下町に姫の親御が居るといいね」
――飄々とした謙信の“押しては引く戦法”にまんまとハマっていることに気付いてない桃は甘酒をおいしそうに飲みながら頷いた。
…確かに謙信は美しい。
清廉潔白な義を掲げる無敗の武将で、攻め込むことはないが、攻め込んでくる者には容赦がない。
かと思えば、義を感じる者は敵であれど受け入れ、守る。
そのため妄信的に謙信を信仰する者も多く、その美貌に惑わされる者も多い。
――隣の桃の顔にも内外から滲み出る色気に流されていることが窺え、大人気ない三成は不機嫌さを顕わにした。
「謙信公の城に逗留つもりはない。城下町の方が何かと動きやすい故」
「三成、上杉の力を使えば容易く見つかる可能性もある。甘んじて殿のご厚意を受け入れよ」
兼続に真顔で諭され、桃も旬の魚を頬張りながら頷いた。
「そうしようよ三成さん」
…身の危険を何ら感じていないのか、月を見上げながら密かに口元で笑った謙信に気付いていた三成は冷え冷えとする笑顔を返した。
「さすれば早々に越後へと発とう。準備があるので失礼する」
三成がさっさと出て行ってしまったので桃も追いかけるように立ち上がる。
「私も行って来るね」
――桃も出て行き、謙信は琵琶を手にする。
「一曲何か弾こうか」
謙信は一人盃を傾けるのが好きなのか、障子を開けて空を見上げながら酒を呷る。
「姫と越後へ共に来るらしいね。君は必要ないんだけどなあ」
「桃を預かっているのは私の役目。口出しは無用にて」
ぴしゃりと断った三成に苦笑が沸いた謙信と三成の顔を桃は交互に見ながらぽかんと口を開けた。
「えっ?三成さんも越後に来てくれるのっ?」
「秀吉様にもお許しを頂いた。長居はできぬが…」
「うんっ、ありがとう!よかったあ、心細かったから嬉しい!」
予想以上に喜んでくれた桃に瞳を細める三成に対し、
幸村は“自分には頼ってくれないのか”と内心落ち込み、
兼続はまんまと手中に飛び込んでくる桃にほくそ笑み、
謙信はいつものように微笑していた。
「心行くまで居るといいよ。城下町に姫の親御が居るといいね」
――飄々とした謙信の“押しては引く戦法”にまんまとハマっていることに気付いてない桃は甘酒をおいしそうに飲みながら頷いた。
…確かに謙信は美しい。
清廉潔白な義を掲げる無敗の武将で、攻め込むことはないが、攻め込んでくる者には容赦がない。
かと思えば、義を感じる者は敵であれど受け入れ、守る。
そのため妄信的に謙信を信仰する者も多く、その美貌に惑わされる者も多い。
――隣の桃の顔にも内外から滲み出る色気に流されていることが窺え、大人気ない三成は不機嫌さを顕わにした。
「謙信公の城に逗留つもりはない。城下町の方が何かと動きやすい故」
「三成、上杉の力を使えば容易く見つかる可能性もある。甘んじて殿のご厚意を受け入れよ」
兼続に真顔で諭され、桃も旬の魚を頬張りながら頷いた。
「そうしようよ三成さん」
…身の危険を何ら感じていないのか、月を見上げながら密かに口元で笑った謙信に気付いていた三成は冷え冷えとする笑顔を返した。
「さすれば早々に越後へと発とう。準備があるので失礼する」
三成がさっさと出て行ってしまったので桃も追いかけるように立ち上がる。
「私も行って来るね」
――桃も出て行き、謙信は琵琶を手にする。
「一曲何か弾こうか」