優しい手①~戦国:石田三成~【完】
伊達政宗の乱
お抱えの忍者集団黒脛巾組からの報告を受け、右眼に眼帯をつけた隻眼の男の若々しい男はにやりと微笑んだ。
「謙信が動いたか。甲斐の大虎とばかりやり合いおって俺の奥州には見向きもせんかったが…よし、俺も行くとしよう」
「殿…こんな所まで上杉謙信を追っていかがなさるおつもりですか?」
――何を隠そう、奥州を統べる伊達政宗と、その家臣片倉小十郎は…
尾張に居た。
「なに、大虎はくたばる寸前だし謙信は攻め込む勇気を持たない地に這う龍。俺の如き大空を舞う龍にはなれんのよ。その謙信が尾張に何をしに来たか…」
それをずっと黒脛巾組に探らせていて、戻って来た男は刀傷を受けて死んでしまった。
「匿われている場所が石田三成の屋敷とは…どのような縁だ?」
「噂では直江兼続と石田三成は旧知の仲だとか。殿、私は賛成致しかねまする」
――長い髪をくくり、深々と頭を下げる小十郎に豪快な笑い声が降った。
「女子だぞ、女子!あの謙信が女子を追いかけて尾張まで来たというのだ、見ずに帰るわけにはゆかぬ!」
謙信の行動の理由が女子という、あまりにも突飛なものであったため政宗の高笑いは止まらない。
「お、この屋敷か。なかなかに良い門構えだな」
「それ以上近付いては気付かれます。少々離れましょう」
馬の手綱を引き、騎乗しようとしたまさにその時――
「きゃあーっ!」
女子の甲高い絶叫が響き、屋敷の方を見ると…
大層立派な軍馬に必死にしがみついたおかしな格好をした女子が飛び出て来た。
「何だあれは」
「殿、危のうございます!」
黒毛の軍馬がこちらに気付き、猪突猛進してくるのを身を呈して小十郎が庇おうと立ちはだかると…
その頭上を、女子が華麗に手綱をさばき、飛び越えていったではないか。
その時に見えたすらりとした太股…
「おおっ!!!」
政宗が興奮した声を上げた。
嫌な予感がして小十郎が振り返ると政宗の隻眼は爛々と光り、去っていく女子の後ろ姿をぽーっと見送っていた。
「見たか小十郎!なんと美しい太股よ!」
「…」
あの女子は一体?
「謙信が動いたか。甲斐の大虎とばかりやり合いおって俺の奥州には見向きもせんかったが…よし、俺も行くとしよう」
「殿…こんな所まで上杉謙信を追っていかがなさるおつもりですか?」
――何を隠そう、奥州を統べる伊達政宗と、その家臣片倉小十郎は…
尾張に居た。
「なに、大虎はくたばる寸前だし謙信は攻め込む勇気を持たない地に這う龍。俺の如き大空を舞う龍にはなれんのよ。その謙信が尾張に何をしに来たか…」
それをずっと黒脛巾組に探らせていて、戻って来た男は刀傷を受けて死んでしまった。
「匿われている場所が石田三成の屋敷とは…どのような縁だ?」
「噂では直江兼続と石田三成は旧知の仲だとか。殿、私は賛成致しかねまする」
――長い髪をくくり、深々と頭を下げる小十郎に豪快な笑い声が降った。
「女子だぞ、女子!あの謙信が女子を追いかけて尾張まで来たというのだ、見ずに帰るわけにはゆかぬ!」
謙信の行動の理由が女子という、あまりにも突飛なものであったため政宗の高笑いは止まらない。
「お、この屋敷か。なかなかに良い門構えだな」
「それ以上近付いては気付かれます。少々離れましょう」
馬の手綱を引き、騎乗しようとしたまさにその時――
「きゃあーっ!」
女子の甲高い絶叫が響き、屋敷の方を見ると…
大層立派な軍馬に必死にしがみついたおかしな格好をした女子が飛び出て来た。
「何だあれは」
「殿、危のうございます!」
黒毛の軍馬がこちらに気付き、猪突猛進してくるのを身を呈して小十郎が庇おうと立ちはだかると…
その頭上を、女子が華麗に手綱をさばき、飛び越えていったではないか。
その時に見えたすらりとした太股…
「おおっ!!!」
政宗が興奮した声を上げた。
嫌な予感がして小十郎が振り返ると政宗の隻眼は爛々と光り、去っていく女子の後ろ姿をぽーっと見送っていた。
「見たか小十郎!なんと美しい太股よ!」
「…」
あの女子は一体?