優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「おいっ、桃、こっちに来い!」


どうしたらいいのかわからずに所在なげにしていた桃を廊下の柱の影から大山が手招きしていた。


「桃、あ、あの御仁は伊達政宗公では?」


「あ、うん。謙信さんを追いかけて来たって言ってたよ」


他人事のようにそう言って大山が手にしていた盆に乗っていた饅頭を拝借すると口に入れたまま桃が戻ろうとするので、また慌てて引き止めて強い口調で諭した。


「奥州と越後の覇者なるぞ、正装して居住まいを正して来い!」


「えーっ?はーい」


言われるがままに自室に戻った桃が饅頭をもごもごさせながら障子を閉めようとすると…


何故か圧がかかって障子が閉まらず、振り返ると、蛇ならぬ竜の睨み合いをしていたはずの政宗が立っていた。


「ほう、ここが姫の部屋か」


「ま、まひゃむねひゃんっ?」


「なに?饅頭のせいで何を言っているのかわからぬ」


口から飛び出ていた饅頭に政宗がかぶりついた。


「!」


「ん、良い味だな」


肩を押さえつけられて動けないのをいいことに、政宗の唇がどんどん侵食してきて、ついには唇と唇が重なり、舌が絡まってきた。


「ん…っ、やっ」


「そなたの唇は甘いな…。それに身体から良い香りがする」


音を立てて激しくキスをしながら政宗は目を閉じずにずっと桃の様子を窺っていた。


…まだ操は誰にも奪われていないようだ。

そう確信して今度は太股に手を這わせる。


――三成、謙信、政宗からそれぞれ違うキスを体験させられた桃は特に激しさを見せる政宗のキスに足腰から力が抜けてへたりこんだ。


「俺の口づけはどうだ?もっと感じたいだろう?」


「ゃ、駄目だったら…」


太股を撫でる手は止まらず、意外に優しい手つきにまた声が漏れそうになって…桃は思い切りもう片足で蹴りを放った。


「う゛っ!」


その蹴りは見事に男の最も大事な場所にヒットした。

命からがらの体で桃が逃げ出し、政宗はしばらくその場にうずくまり、不気味に笑い出した。


「ふふふ…いいぞ桃姫、見事な脚だ!ますます気に入った!」


余計に燃え上がらせただけだった。
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