優しい手①~戦国:石田三成~【完】
風呂に入りつつも桃のうとうとは止まらず何度も溺れかけながら振り返った。


「政宗さんはすごく俺様だけどなんか可愛かったなあ」


謙信は優しく時に冷たい態度を取っては不安にさせ、

三成は他者にも自分にも厳しく、けれど不器用な優しさがたまらない。

時々ものすごく強引なところもたまらない。


「ふわあ、眠たいなあ、早く寝なくちゃ…」


よろよろしながら風呂から上がり、なんとか身支度を整えるとまずは自室に戻って着物などを片付ける。


その間にも眠気は収まらず、そのままころんと横になると目を閉じた。


「ちょっと…ちょっとだけだもん…」


布団に入って寝るのとうとうとするのはまた別物で、気持ち良く寝入ってしまった。


…誰かが団扇で風を送ってくれている。


それにこの固い感触…

誰かが腕枕をしてくれている。


こんなことをしてくれるのは、一人しか居ない。


「ん…三成、さん…」


「残念ながら違うな」


えっと思ったのも束の間、横になった目の前には政宗のやや吊った隻眼が見つめてきていた。


「ま、政宗さ…」


「寝る前に顔を見ておこうと来たら寝ていたのだ。夜ばいに来たのではないぞ」


…と言いながらすでに右手は浴衣の裾を割って太股を撫でている。


「…ん…っ」


「すでに三成か謙信から可愛がられたのか?」


「ち、ちが…っ」


やみくもに抵抗していると、桃の手が政宗の右目の眼帯に触れた。


――幼い頃病に侵されて失った右目。


このせいで、政宗の運命は変わってしまった。


「眼帯の奥を見てみたいか?俺の正室に入る女子にしか見せるつもりはないが…姫ならいいぞ」


悪戯っ子のように笑ったのでついつられて笑うと、今度は例の激しいキスが唇を襲った。


「ん…、んっ!」


「先見の明がなくともそなたが可愛く見えてきた。どうだ、俺の下に敷かれて鳴いてはくれまいか?」


耳元で囁いては耳たぶにもキスをされて、弱点を突かれた桃が少し大きな声を上げた。


「ふむ、耳がいいのか。では…」


舌が入ってきた。
一段と声は高くなった。
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