優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信に導かれた場所は木々が開けた場所で、陽の光を反射して輝く泉が現れた時、桃は大興奮して駆け寄った。


「綺麗!あっ、鳥が泳いでる!ねえ三成さんっ、早く泳ぎたい!」


大きな黒瞳がさらに大きくなって顔を輝かせた桃に3人が一様に頬を緩め、馬たちの手綱を木の幹に繋いでいた幸村に駆け寄るとその手を引っ張った。


「着替えるから見張りお願い!」


「え!俺…いえ、拙者がですか…!?」


頼りきった目で見上げられて断れるわけもなく、恋の奴隷の幸村はやや優越感に満ちた顔で三成たちにどもりながら頭を下げた。


「で、では拙者が見張りに立ちますのでお三方はけしての、の、覗くなど致しませぬように!」


「君もね」


謙信がやんわり笑いながら釘を刺してきて、どきっとなりつつも先を行く桃を追いかけた。


――途中鬱蒼とした場所まで行き、立ち止まってリュックの中に手を入れながら桃がしゃがむ。


「じゃ…お願いね!」


「はっ!」


…背を向けて辺りに注意を払いながら最初のうちは集中していたのだが…

ごそごそと着替える音がして徐々に気が散り、魔がさした幸村がこっそり…肩越しに桃を盗み見た。


「姫…!」


――幸村から背を向けてはいたが、白の見慣れないものを身につけて胸のあたりを調整している桃の姿にむらむらが止まらなくなる。


露わになった腰はものすごく細く、

露わになった脚は驚くほどすらりとしていて長く、

しかも、布の面積の少ないことよ!


喉を鳴らしながら目が離せないでいると、桃がこちらを向きそうな気配がしたので慌てて視線を前に戻した。


「うーん、やっぱり…貧弱だなあ…」


「ひ、姫、お着替えはお済みに…」


「あっ、うん」


――誰よりも早く桃の艶姿を見るチャンスを得た幸村はまともに桃を見た。


「も、桃姫…!」


…貧弱どころか、胸は谷間ができていて結構大きい。


桃が貧弱だと嘆くのは、姉たちと比べるから貧弱と感じるだけで、実際は胸は大きい方だったのだ。


「ああ、もっと胸が大きかったらなあ」


がっかりな声を出した桃を、幸村は強く抱きしめた。
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