優しい手①~戦国:石田三成~【完】
“手伝う”と言って聞かない政宗を説得してハンバーグを作り、大山と一緒に三成たちの居る客間へと運ぶ。


部屋に入ると皆がくつろいでいて、しかも全員湯上りで…

特に元々色気たっぷりな謙信からは香りすら香ってきそうなほどに麗しかった。


「それ美味しそうだね。何て言うの?」


「え!?あ、これはハンバーグって言って…」


「南蛮渡来のものか?」


早速全員が口をつけてくれて、全員が同じような反応をした。


「これは美味い!このたれは何でできているんだ?後で教えてくれ」


「いいよー!」


――そんなたわいもない会話をしているうちに三成が箸を置き、食べるよりも酒を飲むほうが好きな謙信に向き直った。


「明後日発とうと思うが如何か?」


「私は別にいつでもいいよ。かえって姫を早々に越後へ迎え入れて親御がすぐに見つかってしまったら…姫は姫の時代に帰ってしまうかもしれないからね」


…奇妙な沈黙が落ちる。

小十郎や兼続も含め、沈黙に居たたまれない気分になると、努めて明るい声を出して三成の袖を引っ張った。


「そういえば三成さん、ネックレスはちゃんと保管してくれてるよね?」


「ああ、心配せずともしかと厳重に保管してある」


――そう答えながら、もしあの不思議な首飾りが失くなってしまったら…


桃はこの時代に残るしかなくなり、自分に嫁いでくれるのではないか、と…


抱いてはいけない邪な想像を抱いてしまい、三成は眉根を押さえて黙ってしまった。


「三成さん?どしたの!?」


「時に姫…“ねっくれす”とは何だ?」


「うん、私も知りたいなあ。姫の時代のものなの?」


…考えれば自分がどうやってこの戦国…安土桃山時代に来たのか、謙信や政宗に深く話したことはなかった。


「えっとね、そのネックレスっていうものの力で私はここに飛ばされちゃったの」


「ふうん?見てもいい?」


色気が立ち上る謙信に笑いかけられ、桃は俯きながら三成の袖をまた引っ張った。


「私も久々に見たいよ。三成さん、持ってきてもらっていい?」


「わかった」


――思いも寄らぬ出来事が、待っていた。
< 141 / 671 >

この作品をシェア

pagetop