優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「じゃあ私、戻るね」


――何を話したわけでもなく、謙信の傍にいると気分が落ち着いて桃が立ち上がろうとした時…


「ああ姫、ここまで来たんだから…してく?」


「え?」


――“何を?”と問い返そうとすると、手を引かれ、その胸に倒れこんだ。


「男の部屋にのこのこと入ってきたんだ、何もされない…とは思ってないでしょ?」


中性的でいて同性と間違わんばかりに綺麗な顔なので、女の子といるみたいでつい気が緩みがちになってしまう桃はあわあわなりながら身を起こそうともがく。


「ちょっとやだ、謙信さ…」


「私は忍耐強い男だけれど、誰しも好いた女子とひとつ同じ部屋で何もしない…というのは男としてちょっと終わってるよね?」


頬にキスをされてその唇の感触に身を竦めると、今度はその唇が下降し、首筋を撫でた。


「…っ」


「私の夜伽は……ああ、口にできないや。とにかくすごいから、その一端だけ見せてあげるよ」


頬に首筋に謙信の柔らかい髪が触れ、優しく絡まる指に抵抗を忘れ、そのまま畳に押し倒された。


――どうしてなのか、謙信にはいつも全く抵抗できずにいる。


許されないこととわかっていながらも、それができないのは…


やはり、惹かれてしまっているからだ。


「これ、脱がせてもいい?」


「だ、駄目駄目駄目!まだお風呂に入ってないしそれに…」


「入ってたらよかったの?入らなくても姫の身体からは良い香りがするよ」


最も弱い耳元で囁かれ、息を吹きかけられると…もう身体は痺れてしまって、つい震える吐息をついた。


「いつもこんなことしてるわけじゃないからね」


「嘘!慣れてるもん、お願いだからからかわないで…、ぁっ!」


何度も耳に息を吹きかけられながら覆い被さってくる。


「三成からはどこまで許しが出てるのかな?今ここで姫の純潔を奪ってしまってもいいのかな?」


「駄目、はじめては…好きな人と…」


「私はそれに入らないの?」


三成の顔がよぎる。


――謙信は常に余裕があるが、三成はいつも余裕がなく、真剣だった。


「駄目…!」


強い声が出た。
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