優しい手①~戦国:石田三成~【完】
…こんなに堅物なくせにやけにキスは上手いし…手際もいい。


いつの間にか胸元から潜り込んだ手が桃に小さな声を上げさせて、布団は乱れに乱れた。


「ちょ…三成さ…っ」


「…いやか?」


吐息まじりの色っぽい問いかけに、胸元に潜り込んでいる手を思いきりつねりながら外へと出した。


「な、なんで…こんなに、慣れてるの…?」


「…なに?何のことだ?」


ようやく動いていた手が止まり、それでも両手を顔の横でねじ伏せられながら桃は早口でまくしたてた。


「こうゆうの…はじめてじゃ…ないでしょ!?」


「………俺の年齢ではじめてだと…おかしいと思わぬか?」


…それはそうだ…。


――桃の時代では桃の年齢だともう初体験を済ませている子が多く、そういうのに無頓着だった桃にはもちろん経験がなく…


また、三成が初体験だとももちろん思ってはいなかったが…それが何だか意外とショックで、桃は唇を尖らせた。


「どうしてふてくされる?」


「…三成さんとこうゆうことした女の人…今まで何人いるの?」


「!!」


…彼女でも何でもなく、ただ告白しただけなのに思わず三成を責めてしまったのは、

やはりこの石田三成という男を、歴史上の人物ではなく“一人の男”として見つめ始めているからだ。


「…何人だと思うんだ?」


「わかんないけど…でもなんかすごいヤだ。ヤな気分になった!もう離して!」


「離さぬ。俺にこういう経験があるから何だ?はじめてなら良かったのか?」


――そう言ってほしいわけではなく、こんなにも理知的で頑固な男が簡単に女と夜を共にするわけでもないだろう、という桃の女の直感が働いた結果で…


さらに可憐な顔はむっとなった。


「その女の人…好きだったんだ?」


「…やけにこだわるな。もう過去のことだ」


「でも…っ!………ま、私がこんなこと言える義理じゃなかったね、ごめんなさい!」


半ば逆ギレで三成を押しのけて起き上がると、また押し倒される。

その瞳は真剣な光に溢れていて、醜い嫉妬心が一瞬にして吹っ飛んだ。


「そなたのはじめては…俺にくれ」


燃え上がる。
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