優しい手①~戦国:石田三成~【完】
浴衣の帯があっという間に外されてしまい、驚きのあまり絶句していると、三成の唇が胸の谷間に触れた。


「もう、止められぬぞ。そなたの身体を…見てしまったからな」


素肌だったので慌てて桃は背を向けて胸を庇った。


「胸ちっちゃいからダメ!見ないで!」


「小さくはない。桃…抱きたい。いやか?」


…ずるい質問だ。


気持ちは告白したものの、このまま三成に身を委ねてしまったら…帰れなくなる。


「エッチ…するの?無理だよ…怖いもん…三成さん、怖い顔してる…!」


「…俺の顔が…怖い?」


――つい貪欲に桃を求めてしまっているうちに、いつもの冷静さはかなぐり捨てられ、“雄”の目になっていることに桃は気付いていた。


蝋燭に照らし出される幻想的かつ蠱惑的な桃の肢体――


そうだ

抱いてしまえば…

桃が“帰る”と言った時、後悔するのは自分自身だ――


「…わかった」


身体を起こすと桃も起き上がり、露わになった太股や胸を隠しながらこちらを見ずに首を振った。 


「ううん…でも三成さんに気持ち聞いてもらえてよかった」


「…謙信のことはどうする?」


――謙信と三成を比べれば…

三成の方に惹かれていて、好きだと思う気持ちに変わりはない。


ただあの上杉謙信という男は遠い越後から自分を求めてここまで来たのだ。


「謙信さんには…時機を見てちゃんと自分で言うから。三成さん、ごめんね?我慢…できる?」


「我慢?ああ、まあ…仕方ないだろう?俺に抱かれたくないというのだから、無理強いはできぬ」


――背を向けて横になった三成の背中にそっと触れる。


この背中も好きだし、何より手が一番好きだと思う。


「三成さん…手…握って?」


「今は堪えるのにそれどころではない。またあちこち触られたいか?」


「だって…三成さんの手、好きなんだもん」


寝返りを打ち、真向かいになると、シャープでいて線は細いががっちりとした身体で抱きしめられた。


「手だってば…!」


「これがいい」


…本当は抱かれたいのに。
< 152 / 671 >

この作品をシェア

pagetop