優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信とのわだかまりが解けて気分が軽くなった桃は顔を洗い、茶々からもらった桃色の着物を着て腰まで届くつけ髪をして結び、薄化粧をして外に出た。
いつでも桃の傍に居たい幸村がすぐに気付いて桃の前でかしずき、陶酔した顔で見上げては小さな手を取った。
「桃姫…なんと麗しい!」
「幸村さんったら誉めすぎ!」
「こんなに美しくお可愛らしい女子を目にしたのは桃姫が初めてです!」
「桃、行くぞ」
――それまで会話が終わるのを待っていた三成が桃の手を引っ張り、用意した輿に誘導する。
「ちょっとお城に行ってくるから謙信さんたちにも伝えておいてね!」
「はっ、確とお伝えいたしまする!」
慣れない着物に慣れない足袋…
おかげで歩幅は狭いので満足に歩けず、足元を見て歩く桃に見送りに来た大山も幸村も頬を緩ませる。
「ほんにそなたは女子らしゅうなったのう。調子が狂うてならん!」
「女の子らしくなった?ほんと!?」
「桃、俺は先に行く。後でゆっくりついて来い」
「あ、はいっ」
輿に乗り込むと、クロで駆けて行く蹄の音がした。
――幸村はいつもこちらが本当のお姫様になったような態度で接してくれる。
動き出した輿から少し身を乗り出して手を振ると、年上なのに子供のような満面の笑みで手を振りかえしてくれて、またほんわかした。
「幸村さんみたいなお兄ちゃん、欲しかったなあ…」
…致命的に幸村の想いは伝わっていなかったのだが――。
――しずしずと大坂城に着き、三成が抱きかかえてくれて城内へ降ろしてくれると、
女子に対してそんな馬鹿丁寧な扱いをしたことのない毒舌家の三成の対応に、奉行含め城に勤めている全ての人々があんぐり口を開けた。
「一度茶々殿の部屋へ連れて行く。その次は秀吉様だ」
「あ、はい。ねえ三成さん…なんか…みんなが見てるんですけど…」
…自分が見られているというより、皆は三成を見ている。
だが当の本人はどこ吹く風で、桃の背を優しく推した。
「気にするな。桃が可愛らしいから見ているだけだ」
そう言ってまた照れたのか、咳払いをした。
笑みが零れ出た。
いつでも桃の傍に居たい幸村がすぐに気付いて桃の前でかしずき、陶酔した顔で見上げては小さな手を取った。
「桃姫…なんと麗しい!」
「幸村さんったら誉めすぎ!」
「こんなに美しくお可愛らしい女子を目にしたのは桃姫が初めてです!」
「桃、行くぞ」
――それまで会話が終わるのを待っていた三成が桃の手を引っ張り、用意した輿に誘導する。
「ちょっとお城に行ってくるから謙信さんたちにも伝えておいてね!」
「はっ、確とお伝えいたしまする!」
慣れない着物に慣れない足袋…
おかげで歩幅は狭いので満足に歩けず、足元を見て歩く桃に見送りに来た大山も幸村も頬を緩ませる。
「ほんにそなたは女子らしゅうなったのう。調子が狂うてならん!」
「女の子らしくなった?ほんと!?」
「桃、俺は先に行く。後でゆっくりついて来い」
「あ、はいっ」
輿に乗り込むと、クロで駆けて行く蹄の音がした。
――幸村はいつもこちらが本当のお姫様になったような態度で接してくれる。
動き出した輿から少し身を乗り出して手を振ると、年上なのに子供のような満面の笑みで手を振りかえしてくれて、またほんわかした。
「幸村さんみたいなお兄ちゃん、欲しかったなあ…」
…致命的に幸村の想いは伝わっていなかったのだが――。
――しずしずと大坂城に着き、三成が抱きかかえてくれて城内へ降ろしてくれると、
女子に対してそんな馬鹿丁寧な扱いをしたことのない毒舌家の三成の対応に、奉行含め城に勤めている全ての人々があんぐり口を開けた。
「一度茶々殿の部屋へ連れて行く。その次は秀吉様だ」
「あ、はい。ねえ三成さん…なんか…みんなが見てるんですけど…」
…自分が見られているというより、皆は三成を見ている。
だが当の本人はどこ吹く風で、桃の背を優しく推した。
「気にするな。桃が可愛らしいから見ているだけだ」
そう言ってまた照れたのか、咳払いをした。
笑みが零れ出た。