優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「三成…その女子は…何者だ!?」


――茶々の部屋へ向かう最中大声を上げて足音高く近付いてきたのは…


「…清正」


清正、と呼ばれた男は振り返った桃を見てさらに目を見開いた。


「清正って…加藤清正さん?!」


「三成、貴様のような女子の扱いを知らぬ男がどうしてそのような可憐な女子と歩いておるのだ?」


「お前には関係ない。気安く話しかけるな」


――加藤清正。

後々、三成暗殺計画を企て、奔走するこの男の史実を、桃は知っていた。


…見た目は三成と同年齢で、だが三成のようには落ち着いているようには見えず、荒々しい印象があり、桃を怖気づかせる。


「なんか怖い…」


「桃、しばらく黙っていろ」


三成に静かに念を押され、うなずきながら背中に隠れると、短髪の豪快な印象のある清正は三成の前に立ち、背中に隠れる桃を何とか見ようと身体を捩じる。


「どこでそのような女子を見つけた?俺にも見せろ、減るものではないからいいだろう?」


「いや、減る。早く去れ」


「ちっ、後方に隠れてばかりいる文治の腰抜けめ、秀吉様の覚えが良いからといって偉そうにするなよ」


「それは貴様のことだろう?早く去れ。怖がっているのがわからぬのか?」


――珍しく不快さを露わにする三成に、桃は実際に起きた暗殺未遂事件をよもやこんなに身近に感じるとは思いも寄らず、

ただ早く清正と三成が言い合うのをやめてほしいと願い、袖をぎゅうっと握ると、それに気付いた三成がそっと背を押して先を促した。


「俺はしばらく留守にする。秀吉様のお傍から離れるなよ」


「ふん、貴様など居っても居らずとも同じよ。それより…名は何と申す?」


しつこく話しかけてくる清正を桃はどうしても好きになれず、蚊の鳴くような声で、答えた。


「…桃」


「桃か!名も可愛らしいな!三成などやめて俺と居た方が楽しいぞ?」


「…やだ」


「こんな男のどこが面白い?俺が城を案内してやる。来い!」


手を握られそうになり、泣きそうになった時――


「清正!」


大音声が鳴り響き、

振り向くとそこには秀吉が立っていた。
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