優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信は自身の部屋に桃を招き入れると再び距離を取るかのようにして、離れて座る。
どうにも考えていることが読めずに、少し落ち着いてきて色々物事を整理できるようになった桃は欠伸をしている謙信に頭を下げた。
「謙信さん…色々ありがとう。ちょっと落ち着いてきました」
「うん、まあ混乱しててもいいと思うよ。正直言って私も三成が茶々殿と密通しているとは思えないし、ただ姫を泣かせたからそれが嫌でね。いい思いもしたし、落ち着いたら三成と話してみるといいよ」
優しく笑ってパチンとウィンクしてきた謙信にまた心を癒されて、“軍神”と呼ばれるこの男の普段の儚さとのギャップにまた惹かれる。
「…気が多い女と思ってるでしょ?」
「迷うのも仕方ないと思うよ。私たちは今の瞬間でも命を狙われ、そして奪おうとしている。そんな生き様が世の女子の心を惹くんだ。姫も私に少しは惹かれてくれた?」
――少しどころではない。
先に三成と出会わなければ、初恋の相手である謙信と…結ばれていたかもしれないのだ。
絶対あってはならないことだけれど。
「…うん。謙信さんのこと、とっても気になる。でも…」
「先は言わなくていいよ、とりあえずその姫の言葉だけで満足だから。…ん、誰か来たようだね」
「え?」
謙信が立ち上がり、障子を少し開けた。
桃も首を傾けて、少し開いた外を覗いてみると…
「…茶々さん…っ!」
――輿がしずしずと庭に降ろされた。
突然の来訪に、当の三成も寝耳に水だったようで庭先に降り、厳しい顔つきをしていた。
「姫、行ってきたら?」
「やだ!」
肩を竦めた謙信が障子を閉めた。
「多分言い訳をしに来たのだと思うけど…まあいいや、兼続が戻ってくるだろうからお茶でも飲もうか」
「…うん」
また欠伸をした謙信の隣に座った。
一緒に居ると安らぎを与えてくれる。
だからもっと近くに居れば安心できるのではないかと思った。
「三成がこっちに向かって来てるよ。隠れる?」
「え、え!?」
足音だけで誰だかがわかる。
謙信は瞳を閉じて三成の来訪を受け入れた。
どうにも考えていることが読めずに、少し落ち着いてきて色々物事を整理できるようになった桃は欠伸をしている謙信に頭を下げた。
「謙信さん…色々ありがとう。ちょっと落ち着いてきました」
「うん、まあ混乱しててもいいと思うよ。正直言って私も三成が茶々殿と密通しているとは思えないし、ただ姫を泣かせたからそれが嫌でね。いい思いもしたし、落ち着いたら三成と話してみるといいよ」
優しく笑ってパチンとウィンクしてきた謙信にまた心を癒されて、“軍神”と呼ばれるこの男の普段の儚さとのギャップにまた惹かれる。
「…気が多い女と思ってるでしょ?」
「迷うのも仕方ないと思うよ。私たちは今の瞬間でも命を狙われ、そして奪おうとしている。そんな生き様が世の女子の心を惹くんだ。姫も私に少しは惹かれてくれた?」
――少しどころではない。
先に三成と出会わなければ、初恋の相手である謙信と…結ばれていたかもしれないのだ。
絶対あってはならないことだけれど。
「…うん。謙信さんのこと、とっても気になる。でも…」
「先は言わなくていいよ、とりあえずその姫の言葉だけで満足だから。…ん、誰か来たようだね」
「え?」
謙信が立ち上がり、障子を少し開けた。
桃も首を傾けて、少し開いた外を覗いてみると…
「…茶々さん…っ!」
――輿がしずしずと庭に降ろされた。
突然の来訪に、当の三成も寝耳に水だったようで庭先に降り、厳しい顔つきをしていた。
「姫、行ってきたら?」
「やだ!」
肩を竦めた謙信が障子を閉めた。
「多分言い訳をしに来たのだと思うけど…まあいいや、兼続が戻ってくるだろうからお茶でも飲もうか」
「…うん」
また欠伸をした謙信の隣に座った。
一緒に居ると安らぎを与えてくれる。
だからもっと近くに居れば安心できるのではないかと思った。
「三成がこっちに向かって来てるよ。隠れる?」
「え、え!?」
足音だけで誰だかがわかる。
謙信は瞳を閉じて三成の来訪を受け入れた。