優しい手①~戦国:石田三成~【完】
おかしなことになっちゃった…


――それが桃の第一印象で、大山が何とも言えない複雑そうな表情で大広間に彼らの布団を運び込む。

だんだん修学旅行気分になり、テンションが上がった桃は、何故か真ん中に敷かれた自分の布団の上に早速座った。


…だが男たちは一か所に固まり、小声で何か話し合っている。


「?みんな、寝ないの?」


部屋の隅で額を突き合わせていた幸村が声を上ずらせて桃に作り笑顔を浮かべた。


「はっ、すぐ済みますのでしばしお待ちを!」


――枕を抱きしめて嬉しそうに頷いた桃に、三成たちはまた額を突き合わせながら本題に戻った。


「では誰が桃の両隣に?」


「三成は遠慮してもらおう。ずっと桃と一緒に寝ていたのだからな」


政宗が眼帯の紐を手遊びしながら牽制すると、桃から指名された幸村が胸を張ってここぞとばかりに主張する。


「拙者は桃姫からお願いされましたので隣に…」


「私は隣じゃなくてもいいよ。政宗が隣で寝れば?」


――謙信から“政宗”と親しげに呼ばれて、桃の隣で眠る権利を得たことよりもうっかりそっちの方を喜んでしまった政宗が咳払いをしながら頷いた。


「うむ、妥当だな」


「いびきとかかいたら刀の鞘で殴るからね。ほら、姫が待ってるよ行こう」


そして桃の右隣が幸村、左隣が政宗で、頭の向かい側に謙信、右隣が兼続、左隣が三成、さらに小十郎という並びになり、


桃が笑顔全開でころんと横になり、幸村に話しかける。


「みんなで寝るのって楽しいね!越後に着くまでみんなでこうして寝ようよ!」


「は、はっ!」


…蛇の生殺し状態でいて夢のような提案をされ、しかも横になった桃の浴衣の胸元からは…谷間が見えていた。


――女に全く免疫のない幸村はそれだけで鼻血が出そうになり、口元を押さえていると桃の肩を政宗が引いた。


「姫、こちらにも向いてくれ。寝顔を見れるとは嬉しいことだ。胸に抱いて寝てやってもいいぞ」


「え?」


「ふわあ、眠たくなっちゃった…ねえもう寝ようよ」


謙信の眠たそうな声に、桃がどきっとする。


謙信と同じ部屋で眠る。


急に緊張してしまう。
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