優しい手①~戦国:石田三成~【完】
…謙信を一目見た時、恋に落ちた。
こんな綺麗な男の人が存在するのか、と思うほど儚くも、時々見せる男らしさがたまらなく、
今ものんびり空を眺めているが…ひとつひとつの所作が洗練されていて、とても美しい。
思わずやわらかい美貌の横顔に見入っていると…
「ん、まだ事切れてなかったか…」
「え?」
木立の陰から葉が擦れ合う音がして、謙信が静かに見つめている方向を見ると…
「きゃ…っ!」
腹を押さえた男がよろよろとよろめきながら近付いてきた。
手は鮮血に染まり、口に布を巻いた頭巾姿のその姿はまさしく、忍者。
「謙信さ…っ」
「目を閉じていて」
…目を塞ぐ直前、立ち上がった謙信の足元を見た。
そこには、血だまりができていた。
――上杉謙信…この男は誰よりも早く刺客の気配を察知して起き、始末をしに単身庭へ出て行ったのだ。
…欠伸をしながら。
「徳川の者だね。悪いけど三河には寄らないよ、それに桃姫もあげないから」
「ぐ…っ、差し違えてでも…!」
「誰と刺し違えるの?もしかして、私と?」
桃は言われた通りに両手で目を塞いでいたが耳は塞いでいない。
――徳川家康。
…三成を追いつめ、死に追いやった男。
「天下を取るのは、我が主君徳川家康様だ!」
「じゃあもう逝くといいよ」
徳川の刺客が謙信に向かって走ってくる音がして、そして…
ザシュッ。
思わずびくっとなる。
鞘走りの音も全く聞こえなかった。
そして障子が開く音がして、恐怖で肩を震わせる桃の手を握ると部屋の中へ入れた。
「ごめんね、刺激が強すぎたね。そこに居て、後始末をしてくるから」
――障子を閉めようとした謙信の手を掴んだ。
…人が命を落とす場面に、はじめて立ち会った。
天真爛漫な桃にもさすがに恐怖に戦き、謙信にしがみつく。
「や、やだ、一人にしないで!」
「…まあいっか、うん、じゃあここに居るよ。役得だなあ、姫に縋りつかれちゃった」
にこ、と笑った謙信は、やはり強かった。
そのギャップにまた惹かれる。
こんな綺麗な男の人が存在するのか、と思うほど儚くも、時々見せる男らしさがたまらなく、
今ものんびり空を眺めているが…ひとつひとつの所作が洗練されていて、とても美しい。
思わずやわらかい美貌の横顔に見入っていると…
「ん、まだ事切れてなかったか…」
「え?」
木立の陰から葉が擦れ合う音がして、謙信が静かに見つめている方向を見ると…
「きゃ…っ!」
腹を押さえた男がよろよろとよろめきながら近付いてきた。
手は鮮血に染まり、口に布を巻いた頭巾姿のその姿はまさしく、忍者。
「謙信さ…っ」
「目を閉じていて」
…目を塞ぐ直前、立ち上がった謙信の足元を見た。
そこには、血だまりができていた。
――上杉謙信…この男は誰よりも早く刺客の気配を察知して起き、始末をしに単身庭へ出て行ったのだ。
…欠伸をしながら。
「徳川の者だね。悪いけど三河には寄らないよ、それに桃姫もあげないから」
「ぐ…っ、差し違えてでも…!」
「誰と刺し違えるの?もしかして、私と?」
桃は言われた通りに両手で目を塞いでいたが耳は塞いでいない。
――徳川家康。
…三成を追いつめ、死に追いやった男。
「天下を取るのは、我が主君徳川家康様だ!」
「じゃあもう逝くといいよ」
徳川の刺客が謙信に向かって走ってくる音がして、そして…
ザシュッ。
思わずびくっとなる。
鞘走りの音も全く聞こえなかった。
そして障子が開く音がして、恐怖で肩を震わせる桃の手を握ると部屋の中へ入れた。
「ごめんね、刺激が強すぎたね。そこに居て、後始末をしてくるから」
――障子を閉めようとした謙信の手を掴んだ。
…人が命を落とす場面に、はじめて立ち会った。
天真爛漫な桃にもさすがに恐怖に戦き、謙信にしがみつく。
「や、やだ、一人にしないで!」
「…まあいっか、うん、じゃあここに居るよ。役得だなあ、姫に縋りつかれちゃった」
にこ、と笑った謙信は、やはり強かった。
そのギャップにまた惹かれる。