優しい手①~戦国:石田三成~【完】
意気揚々と戻って来た桃に対して、脱力して戻って来た幸村に苦笑したのは、謙信だった。


「おや…手ひどくやられたみたいだね。桃姫の裸はどうだった?」


こそっと耳打ちをされて飛び上がりそうになりながら、いつかは謙信の正室になるかもしれない桃の裸を見て喜んでいた自分を諌め、深々と頭を下げた。


「も、申し訳ありません!」


「別に責めてないよ」


――すでに酒が入っている謙信はその時政宗と三成と飲み比べを始めていた。

それぞれが酒豪であるため、多少飲んだ所で酔いはしないのだが…


幸村は慌ただしく槍を持ち、外へ出て行く。


「見回りをしてきます。桃姫、湯冷めせぬようご注意くださいませ」


「ありがとう」


にこっと笑いかけられて、それだけで天にも昇るような気分になりながら出て行った幸村を見送り、桃は当たり前のように三成の隣に腰かけた。


テーブルにはもうすでに空になった徳利が沢山並べられていて、部屋に充満する酒の香りだけで桃は酔いそうになって鼻を手で覆った。


「みんな飲み過ぎ!」


「姫はまた湯上りで艶やかだな。どうだ、今宵は俺と別室で床を共に…」


馴れ馴れしく桃の肩を抱いては引き寄せようとする政宗の手を三成の刀の鞘が結構な勢いで叩き落とす。


「抜け駆け無しと誓ったはずだぞ政宗公。桃、その…し、尻はどうだ?」


「う、うん、まだちょっと痛いけど温泉のおかげでかなりましになったよ!心配してくれてありがと」


――ちょっと良い雰囲気になった二人に、謙信がふっと微笑む。


「姫もこれ飲んでみる?美味しいよ」


「ほんと?お酒って全然飲んだことなくって…興味はあったんだけどお姉ちゃんたちに止められてたから。じゃあ舐めるだけね!」


3人が見守る中、徳利に少しだけ注がれたお酒をひと舐めした。

米の味がして、意外と飲みごたえがあったので、勢いのままそのままグーッと一気飲みした。


「あ…」


皆がそう呟いたが、思った通りその後桃の顔は真っ赤になり…三成の膝に倒れこむ。


「桃、大丈夫か?」


「美味しいー、でも…ふわふわするう」


完全に酔ってしまい、眠り込んでしまった。
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