優しい手①~戦国:石田三成~【完】
深夜――


酒が抜けて目が覚めた桃は、隣に三成が寝ていることに安心してほっと息をついた。


前みたいな関係に戻れそうな気がする――

茶々には悪いけれど、それでもやはり三成のことを好きだと思う。


がたんっ


「ひゃ…っ」


外から物音がして身体を揺らすと、同じ音で目が覚めたのか、三成の目がゆっくりと開いた。


「怖いのか?」


「こ、怖いよっ」


「こっちに来い」


もそっと布団から起き上がって隣の三成の布団に潜り込み、ぎゅっと胸にしがみついた。


「あったかい…」


「そんなにくっつかれると…困る。少し離れろっ」


「やだっ。一緒に居てよ」


――しばらく困った顔をしていたが、ばさっと掛け布団が降ってきて、視界が真っ暗になった。


「三成さん?」


「しばらくそなたに触ってなかったんだ、滾ってくるものが抑えられぬ」


頬を両手で包み込まれ、唇が重なった。


布団の中で唇の音が鳴っては身じろぎしてしまう桃の脚に三成の脚が絡んで動きを封じられ、普段は優しい手が凶暴に桃の手を頭の横で抑え込んだ。


浴衣が捲れ上がり、長い腕が伸びて太股を撫でられてまた声を上げそうになった時、キスでそれを封じられた。


――普段は優しいのに、時にこうして激しく求めてくることがある。


けれど最近はずっとぎくしゃくしていたので、

こうしてまた一緒に眠ることができて、

こうしてキスしてくれることが嬉しくて、桃の身体から力が抜けた。


そして三成が苦笑して太股から手を離し、桃をきつく抱きしめて抱え込む。


「皆が居なければな…抱いていたんだが…」


「駄目だよ、それだけは駄目…」


――帰れなくなるから。


…まだ丑三つ時だ。

三成の身体のあたたかさに溺れながらまた眠気が襲ってきて、すぐに寝息を立てた桃の着崩れた浴衣を直してやって、昂った感情を抑え込みながら無理矢理瞳を閉じる。


…桃の左隣は、謙信だ。

きっと気付いているだろうが、何も言ってこない。


どうしても、奪われたくなかった。
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