優しい手①~戦国:石田三成~【完】
“手で洗う”


――長い腕を伸ばして近寄ってくる桃をいなそうと必死になりながら口ごもる。


「よ、嫁入り前の女子が男の身体に簡単に触れていいものではない!」


「え、でも…汗気持ち悪いでしょ?身体洗った方がさっぱりするし!」


石鹸を手で泡立てて、背中に桃のあたたかい手とぬるりとした感触が伝わってきて、思わず身震いをした。


「気持ちいい?」


「ん…あ、ああ、そうだな…」


「男の人の身体って…固いんだね。女の子とは大違いだよ」


「そなたはよく姉上たちと共に風呂に入ったりしていたのか?」


「うん、その方が楽しいでしょ?」


――そう言いつつ手がわき腹に移動して、腰まで上下に手が万遍なく滑る様に声を上げそうになり、必死に唇を噛み締めて耐えた。


「ごつごつしてるし…ほんと全然違う…。あれ?三成さん、どしたの?」


「……前も洗ってくれるのか?」


「!!!」


…さすがに今まで無邪気だった桃も三成と湯の中以外で向き合うのは恥ずかしいらしく、慌てた様子で石鹸を手渡してきた。


「えっと…前はさすがに…」


「もちろん上だけでいい。そなたが言い出したんだ、やってもらうぞ」


意地悪半分でにやりと笑うと、負けず嫌いに火がついたのか両手で胸を撫でるようにして洗ってきた。


「ちゃんとやるもん!」


そう言いつつもう身体も見なければ目も合わせない桃の手を握り…身体にぶつけるようにして引き寄せた。


「きゃ…っ」


「俺もそなたの身体を洗いたい…と言ったらどうする?」


――魅惑的に耳元で囁かれて、顎を取って上向かせられたその手の優しさは尋常ではなく、


好きな人に触れられるというのが、何倍も…何万倍も心地いいということに、この時初めて桃は思い知った。


「よ、嫁入り前の女の子の身体に簡単に触っちゃいけないんだよ!」


見つめ合ったまま視線を外すこともできずに言い募ると、

斜めにゆっくりと近付いてくる怜悧な美貌にぼーっとなりながら、唇が重なる寸前に三成は本音を口にした。


「心配するな、俺が嫁に貰ってやる」


――委ねそうになる。
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