優しい手①~戦国:石田三成~【完】
髪から頬から水を滴らせる三成の潤んだ瞳の中に自分が映っているのが見える。
うっとりと三成を見上げている自分自身の顔も――
「三成さん…」
「…湯着が透けている。早く上がって幸村の傍に居ろ」
――勢いでどうにでもなっていい、と思っていた桃に張り手をくらわしたかのようなその言葉にはっと我に返って胸元を見下ろすと…
身体がくっきりと透けていて、慌てて手で庇いながら脱衣所へと駆けて扉を閉めた。
「私…何を…」
――姉の桜から言われた言葉が何度も何度も頭の中に響く。
“歴史を動かすような人物と親しくなってはいけない”
関ヶ原の戦いを起こした張本人、石田三成。
“軍神”と崇め奉られて生涯無敗を誇った上杉謙信。
“独眼竜”と名高く、血気盛んで戦上手と謳われた伊達政宗。
武田信玄の下で“最強”の名を欲しいがままにしていた真田幸村――
「駄目駄目、お姉ちゃんの言うことは絶対だもん」
家族を想うと、途端に帰りたくなる。
ただ…誠実でいて揺るぎない信念を持った三成には惹かれて止まず、謙信の押しては引いてその気にさせられてしまうあの優しさにどっぷりハマりそうになり…
戦国の武将たちに流されて翻弄されている自身の身を、桃も気が付いていた。
「ほんと私って気が多いんだから…」
浴衣を着て渡り廊下を歩いて部屋へ戻るともう皆は起きていて、朝食を摂っていた。
「朝からお風呂?いいね、私も入ってこようかな」
「なりませぬ!すぐに出発します故、しかししっかりと噛んで食するのですぞ!」
「小姑」
かけあい漫才を繰り広げて桃を笑わせると、自然と幸村の隣に座って白米を口にしては幸せそうな顔になった桃を、幸村もにこにこしながら見つめていた。
「あ、そうだ!幸村さん、今度は私が背中洗ってあげるね!」
「は…はっ、ありがたき幸せ!」
「えーっ、私も流されたい。今夜楽しみにしているからね」
「何を言う!次は俺だ!」
また政宗と謙信が押し問答を初めて、面白おかしそうにして見ていると三成が入ってきて桃の隣に腰かけた。
どきっとなって、また俯いた。
うっとりと三成を見上げている自分自身の顔も――
「三成さん…」
「…湯着が透けている。早く上がって幸村の傍に居ろ」
――勢いでどうにでもなっていい、と思っていた桃に張り手をくらわしたかのようなその言葉にはっと我に返って胸元を見下ろすと…
身体がくっきりと透けていて、慌てて手で庇いながら脱衣所へと駆けて扉を閉めた。
「私…何を…」
――姉の桜から言われた言葉が何度も何度も頭の中に響く。
“歴史を動かすような人物と親しくなってはいけない”
関ヶ原の戦いを起こした張本人、石田三成。
“軍神”と崇め奉られて生涯無敗を誇った上杉謙信。
“独眼竜”と名高く、血気盛んで戦上手と謳われた伊達政宗。
武田信玄の下で“最強”の名を欲しいがままにしていた真田幸村――
「駄目駄目、お姉ちゃんの言うことは絶対だもん」
家族を想うと、途端に帰りたくなる。
ただ…誠実でいて揺るぎない信念を持った三成には惹かれて止まず、謙信の押しては引いてその気にさせられてしまうあの優しさにどっぷりハマりそうになり…
戦国の武将たちに流されて翻弄されている自身の身を、桃も気が付いていた。
「ほんと私って気が多いんだから…」
浴衣を着て渡り廊下を歩いて部屋へ戻るともう皆は起きていて、朝食を摂っていた。
「朝からお風呂?いいね、私も入ってこようかな」
「なりませぬ!すぐに出発します故、しかししっかりと噛んで食するのですぞ!」
「小姑」
かけあい漫才を繰り広げて桃を笑わせると、自然と幸村の隣に座って白米を口にしては幸せそうな顔になった桃を、幸村もにこにこしながら見つめていた。
「あ、そうだ!幸村さん、今度は私が背中洗ってあげるね!」
「は…はっ、ありがたき幸せ!」
「えーっ、私も流されたい。今夜楽しみにしているからね」
「何を言う!次は俺だ!」
また政宗と謙信が押し問答を初めて、面白おかしそうにして見ていると三成が入ってきて桃の隣に腰かけた。
どきっとなって、また俯いた。