優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その日も桃は学校へ行き、入部している陸上部で汗を流し、スーパーで買い物をしていた。


「やっぱり熱い気がする…。何だろこれ。こんなのはじめてだなあ」


桃はのんびり屋だった。
末っ子として甘やかされたせいもあったが、それでもスポーツ万能で、人を笑わせる才にも長けている人気者だった。


「桃ちゃん、今日食事当番?これ食べてきな!」


いつも買い物に行くスーパーの試食コーナーから40代位の年配の女性から呼ばれて、食い意地の張っている桃はものすごい勢いで走り寄ると、新製品のソーセージを美味しそうに頬張った。


「今日もいい食べっぷりだね!桃ちゃん可愛いんだから髪伸ばしてみたら?」


「ううん、走る時邪魔だから伸ばさないの。それに私じゃじゃ馬だから綺麗にまとめたりできないし、無理!」


そう言っては手を振り、食材を買い込んでスーパーを後にしながら石を手でいじる。
それは姉妹そろっての癖だった。


「今日はハンバーグ!美味しいソース作っちゃおっと!」


当番制で桃になる時は必ず大好物を作るようにしていて、姉妹揃って食い意地が張っていたので、全員料理が上手い。


「ただいまー!桜お姉ちゃん、今日はハンバーグだよー」


「えー、またー?」


長い髪を綺麗にヘアピンなどを使ってまとめた桜がダイニングから顔を出して…そして気がついた。


「桃…あんたそれ…光ってない?」


桃はスーパーの袋を手に提げたまま胸元を見ると…

朝以上にそれは輝きを増していた。


「え、わっ、どうしよ、これなに!?」


騒ぎを聞きつけた残りの4姉妹が出て来て、代わる代わる金色の欠片の石に触れてみるが…熱くはない。


「え、これ熱いよ?どして?私だけ?」


「も、桃…それってまさか…オーパーツが…」


桜の顔が青ざめた時――



金色の石が目が痛いほどに猛烈な光を発した。



「きゃあっ!!」



その発光現象は10秒ほど続き、誰もが目を瞑ったままだった。



「今のなに………、あれ?桃?桃!?」



――桃の姿は4姉妹の中心から忽然と消えていた。
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