優しい手①~戦国:石田三成~【完】
幸村が皆が居る部屋へと入った時、桃が笑顔で迎え入れてくれて、袖を軽く引っ張りながら見上げてきた。
「幸村さんお疲れ様。あの人大丈夫だった?」
「…はいっ、大事ございませんのでご安心くださいませ」
「うん…でもやっぱり心配だし…。ちょっとだけ見に行ってもいい?」
「桃」
三成にまた咎められたが、元の時代から持ってきたバッグをごそごそと漁って、小さな小箱と湿布薬を皆に見せた。
「これね、鎮痛剤なの。あと湿布。どっちも部活やってた時によくお世話になってたし、これを使えばかなり楽になると思うから…だから…」
上目遣いで目をうるうるさせると、ぐっと言葉に詰まった三成が重たい腰を上げた。
「俺がついて行く。あまり言葉を交わすな」
「うん、ありがとう三成さん!」
腕に抱き着かれると、しらけた視線を送ってくる政宗や余裕の笑みを浮かべている謙信と目が合って荒々しく部屋を出た。
「それが何なのかよくわからぬが…あの女子が間諜である場合、まずいことになる。わかっているのか?」
「え、なんで?」
…やはりわかっていないらしく、三成が1階へ降りる階段の途中で立ち止まり、桃を見上げた。
「それはこの時代にはないものなのだろう?そのように簡単に使っていいものか、と危惧しているのだ。疑われるぞ」
「あ…そっか…。でも三成さんたちが守ってくれるんでしょ?だったら大丈夫だよっ」
あっけらかんと信頼を寄せてくる桃にまた苦笑が沸いて、腕を伸ばした。
手を借りて階段を降り、宿の主人たちの目が届く小さな部屋で半ば軟禁状態にある女とようやく対面した。
――部屋の窓辺に座り、右脚を摩っていた女が桃を見て笑顔に…そして三成を見て笑顔を引っ込める。
「えっと、お加減いかがですか?」
「大丈夫です。あの…」
互いに名乗っていないことに気が付いて、警戒心なく女の前に座ってにこっと笑いかけた。
「桃って言うんです。あなたのお名前は?」
「清野と申します。桃、さん…?」
名を呼ばれ、桃が首を傾げる。
清野はまじまじと桃を見ながら呟いた。
「私…あなたを知っている…」
「幸村さんお疲れ様。あの人大丈夫だった?」
「…はいっ、大事ございませんのでご安心くださいませ」
「うん…でもやっぱり心配だし…。ちょっとだけ見に行ってもいい?」
「桃」
三成にまた咎められたが、元の時代から持ってきたバッグをごそごそと漁って、小さな小箱と湿布薬を皆に見せた。
「これね、鎮痛剤なの。あと湿布。どっちも部活やってた時によくお世話になってたし、これを使えばかなり楽になると思うから…だから…」
上目遣いで目をうるうるさせると、ぐっと言葉に詰まった三成が重たい腰を上げた。
「俺がついて行く。あまり言葉を交わすな」
「うん、ありがとう三成さん!」
腕に抱き着かれると、しらけた視線を送ってくる政宗や余裕の笑みを浮かべている謙信と目が合って荒々しく部屋を出た。
「それが何なのかよくわからぬが…あの女子が間諜である場合、まずいことになる。わかっているのか?」
「え、なんで?」
…やはりわかっていないらしく、三成が1階へ降りる階段の途中で立ち止まり、桃を見上げた。
「それはこの時代にはないものなのだろう?そのように簡単に使っていいものか、と危惧しているのだ。疑われるぞ」
「あ…そっか…。でも三成さんたちが守ってくれるんでしょ?だったら大丈夫だよっ」
あっけらかんと信頼を寄せてくる桃にまた苦笑が沸いて、腕を伸ばした。
手を借りて階段を降り、宿の主人たちの目が届く小さな部屋で半ば軟禁状態にある女とようやく対面した。
――部屋の窓辺に座り、右脚を摩っていた女が桃を見て笑顔に…そして三成を見て笑顔を引っ込める。
「えっと、お加減いかがですか?」
「大丈夫です。あの…」
互いに名乗っていないことに気が付いて、警戒心なく女の前に座ってにこっと笑いかけた。
「桃って言うんです。あなたのお名前は?」
「清野と申します。桃、さん…?」
名を呼ばれ、桃が首を傾げる。
清野はまじまじと桃を見ながら呟いた。
「私…あなたを知っている…」