優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「では行って来る」
愛馬に乗る直前、桃は三成に駆け寄って手をくいっと引っ張った。
――この時代に来て頼れる者は三成しか居ない、と妄信的に頼りきっている桃が…
大山ら家臣の居る前で隠すことなく三成らが絶句する発言を笑顔でしてのけた。
「行ってらっしゃいのチューしよっ」
…チューというものが何であるのか知っているのは三成だけで、努めていつものように堅苦しい表情を作っていたのに…
フリーズしてしまった。
「背が足りないから少し屈んでね」
「あ、いや…桃…あれはいい。しなくていい」
――きょとんとなりながらも桃は掴んだ手を離さない。
逆にまだ心を開いてくれない三成に詰め寄ると、ジャンプするようにして三成の頬にキスをした。
気付いてはいたのだが…三成はかなり恥ずかしがり屋らしく、あまりこちらを見て話してくれないし…
朝からかなりぎくしゃくしていて、それが自分のせいなのではないかと思い始めていた。
「こっこれ桃っ何をする!」
大山に怒られ、無理矢理三成から引きはがされると、こちらとしては親愛の証のチューなのに…
それを受け入れてくれない三成が悲しくて、今にも泣きそうな表情でしゅんとなった。
「…駄目?」
「…それは駄目だが…これならいい」
差し出された手。
三成は握手のことを覚えていて、薄い唇の口角が少し上がっていたので、怒ってはいないのだと安心した桃が、ぎゅっと握手を交わす。
「三成さん行ってらっしゃい!早く帰って来てね!」
「あ…、ああ」
身を翻すと愛馬に乗り、そのまま走り去った三成を見送った後、また大山に桃は怒られてしまう。
「三成様は奉行ぞ。御役目があるのだ、早々早くは帰って来れぬ!」
「そっか、秀吉さんの右腕だったね。えーと…確か大河ドラマじゃ直江さんと仲良しで…」
「なに?」
――上杉の忠臣直江兼続の名が出て、大山はますます桃を疑いの眼差しで見つめた。
「…どこまで知っている?」
「え…あ…うん、言っちゃいけないんだった…ごめんね」
――その日から三成は毎日早く帰って来るようになった。
愛馬に乗る直前、桃は三成に駆け寄って手をくいっと引っ張った。
――この時代に来て頼れる者は三成しか居ない、と妄信的に頼りきっている桃が…
大山ら家臣の居る前で隠すことなく三成らが絶句する発言を笑顔でしてのけた。
「行ってらっしゃいのチューしよっ」
…チューというものが何であるのか知っているのは三成だけで、努めていつものように堅苦しい表情を作っていたのに…
フリーズしてしまった。
「背が足りないから少し屈んでね」
「あ、いや…桃…あれはいい。しなくていい」
――きょとんとなりながらも桃は掴んだ手を離さない。
逆にまだ心を開いてくれない三成に詰め寄ると、ジャンプするようにして三成の頬にキスをした。
気付いてはいたのだが…三成はかなり恥ずかしがり屋らしく、あまりこちらを見て話してくれないし…
朝からかなりぎくしゃくしていて、それが自分のせいなのではないかと思い始めていた。
「こっこれ桃っ何をする!」
大山に怒られ、無理矢理三成から引きはがされると、こちらとしては親愛の証のチューなのに…
それを受け入れてくれない三成が悲しくて、今にも泣きそうな表情でしゅんとなった。
「…駄目?」
「…それは駄目だが…これならいい」
差し出された手。
三成は握手のことを覚えていて、薄い唇の口角が少し上がっていたので、怒ってはいないのだと安心した桃が、ぎゅっと握手を交わす。
「三成さん行ってらっしゃい!早く帰って来てね!」
「あ…、ああ」
身を翻すと愛馬に乗り、そのまま走り去った三成を見送った後、また大山に桃は怒られてしまう。
「三成様は奉行ぞ。御役目があるのだ、早々早くは帰って来れぬ!」
「そっか、秀吉さんの右腕だったね。えーと…確か大河ドラマじゃ直江さんと仲良しで…」
「なに?」
――上杉の忠臣直江兼続の名が出て、大山はますます桃を疑いの眼差しで見つめた。
「…どこまで知っている?」
「え…あ…うん、言っちゃいけないんだった…ごめんね」
――その日から三成は毎日早く帰って来るようになった。