優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「さな…真田って…真田十勇士の?」

「十勇士?それは一体何でしょうか?」


――隣を歩く幸村と名乗った男の派手な朱色の陣羽織には…六文銭のマーク。


…間違いない。本物の真田幸村だ。


「え、えーと…」


「桃殿は…少し風変わりな格好ですが…日本の方ではないのですか?」


「あ、日本人だよ!これはね、えーと…私が作ったの。セーラー服って言うんだよ!」


幸村があまり失礼にならない程度に桃のむき出しの脚を見ては…顔をやや赤くして、桃の視線に気付いては、慌てて頭を下げて来た。


「し、失礼した!その…女子の脚などこんな明るい時分に見たことがないもので…」


「ううん、いいの。それにしても…幸村さんも…イケメンだねえ」


――歴史で習った真田幸村は勇猛で果敢な武将。
天才軍師とも言われ、槍を使わせると右に出る者が居ないといわしめた男だ。


確かに背中には…布に覆われてはいるが、大型の武器のようなものを背負っている。


「いけめん?それは一体?」


「あ、いいのごめんね!あっ、私がお世話になってるお家はここだから。わざわざありがとうございました!」


ぺこりと頭を下げた桃と別れるのが名残惜しく、幸村は食い下がった。


「あ、桃殿…よければ拙者と少し話でも…」


「も、ももも桃!!!そちらの男は…真田幸村では!?」


すっとんきょうな声を上げたのは、門番と立ち話をしていた大山だ。
幸村を指差しながら口をあわあわさせて、ものすごく驚いている様子に桃は大山に駆け寄った。


「大山さん?どうしてそんなに驚いて…」


「桃!真田家は今は上杉に恭順している者ぞ!豊臣軍とは…敵の仲じゃ!」


「えっ」


大山がすらりと刀を抜いた。


「何をしに参った?桃!なぜ真田と一緒に居た!?」


「えーと、川に飛び込んだらね、幸村さんが助けてくれてね」


しどろもどろに説明している間にも、刀を突き付けられながら幸村はにこやかに笑っていた。


「拙者は敵ではありませぬ。兼続様より文を預かって参った。こちらは…石田三成邸ですね?」


歴史の知識が浅い桃は、ただぽかーんとしていた。
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