優しい手①~戦国:石田三成~【完】
翌朝――城内は怒号が行き交い、その声で桃も謙信も目が覚めた。
欠伸をしながら謙信が起き上がると…問答無用で、襖が開く。
「きゃ…っ」
「殿、殿!い、一大事にございます!」
兼続が血相を変えて謙信の前までにじり寄ると、叫んだ。
「武田信玄が川中島に向けて進軍しております!その数、2万!」
「…信玄が…。ああそうか、それで胸騒ぎがしていたんだね」
――最強で最高のライバル、甲斐の武田信玄。
度々喀血し、もう死期が目の前まで来ていて、だからこそ甲斐の宝でもあった真田幸村を託してきた。
「…病では死なない、と。あなたはそう言いたいんだね」
ぽつりとそう呟いたのが聴こえた。
一度目を閉じてしばらく黙り、そして顔を上げた時――
謙信の顔は武将の顔になっていた。
「兼続、今すぐに進軍の準備を。出陣する」
「はっ!御意にございます!」
慌ただしく部屋を出て行った兼続に、桃が謙信の袖を引いた。
「謙信さん、戦に行くの!?武田信玄さんと戦うの!?」
「うん、そうだよ。あの虎を退治しに行くんだ。これで必ず、終わらせてみせる」
第五次に渡る川中島の戦い。
あまりにも有名な上杉謙信と武田信玄との戦いは、現在でも語り草になり、日本史の教科書には常に紹介されている。
その戦が、始まるのだ。
「謙信さん…!」
「心配しないで、必ず戻ってくるから。…もう行くよ、準備しないとね」
颯爽と立ち上がって居なくなった謙信は、いつもの優しさに溢れた謙信ではない。
――昨晩、謙信は胸騒ぎを感じていたのだろう。
永遠のライバル武田信玄が病を押してまで謙信と戦いに川中島へと姿を見せるのだ。
桃も身体が震えてきて、何とか外に這い出ると三成の名を叫んだ。
「三成さん、どこに居るの!?」
――しばらくすると足早に駆けて来る足音がして、肩に手が乗った。
「桃、どうした?」
「謙信さんが川中島に…!どうしよう、心配だよ…!」
「…謙信は最強の無敗の将だ。必ず戻ってくる」
――だが桃の胸騒ぎは、収まらなかった。
欠伸をしながら謙信が起き上がると…問答無用で、襖が開く。
「きゃ…っ」
「殿、殿!い、一大事にございます!」
兼続が血相を変えて謙信の前までにじり寄ると、叫んだ。
「武田信玄が川中島に向けて進軍しております!その数、2万!」
「…信玄が…。ああそうか、それで胸騒ぎがしていたんだね」
――最強で最高のライバル、甲斐の武田信玄。
度々喀血し、もう死期が目の前まで来ていて、だからこそ甲斐の宝でもあった真田幸村を託してきた。
「…病では死なない、と。あなたはそう言いたいんだね」
ぽつりとそう呟いたのが聴こえた。
一度目を閉じてしばらく黙り、そして顔を上げた時――
謙信の顔は武将の顔になっていた。
「兼続、今すぐに進軍の準備を。出陣する」
「はっ!御意にございます!」
慌ただしく部屋を出て行った兼続に、桃が謙信の袖を引いた。
「謙信さん、戦に行くの!?武田信玄さんと戦うの!?」
「うん、そうだよ。あの虎を退治しに行くんだ。これで必ず、終わらせてみせる」
第五次に渡る川中島の戦い。
あまりにも有名な上杉謙信と武田信玄との戦いは、現在でも語り草になり、日本史の教科書には常に紹介されている。
その戦が、始まるのだ。
「謙信さん…!」
「心配しないで、必ず戻ってくるから。…もう行くよ、準備しないとね」
颯爽と立ち上がって居なくなった謙信は、いつもの優しさに溢れた謙信ではない。
――昨晩、謙信は胸騒ぎを感じていたのだろう。
永遠のライバル武田信玄が病を押してまで謙信と戦いに川中島へと姿を見せるのだ。
桃も身体が震えてきて、何とか外に這い出ると三成の名を叫んだ。
「三成さん、どこに居るの!?」
――しばらくすると足早に駆けて来る足音がして、肩に手が乗った。
「桃、どうした?」
「謙信さんが川中島に…!どうしよう、心配だよ…!」
「…謙信は最強の無敗の将だ。必ず戻ってくる」
――だが桃の胸騒ぎは、収まらなかった。