優しい手①~戦国:石田三成~【完】
さすがに豪奢な着物姿の桃を馬に乗せるわけにもいかず、考えていると…
桃は黒毛の馬の前で裾を太股まで捲ってみせた。
「!!」
「これなら乗れるでしょ?」
今にも怒られそうな気配を察した桃は捲るのを止めて中腰で座り込んだ。
「てか制服返してもらってないよ。帰る時に着て帰らなきゃ」
…当たり前のことを言ったのだが、三成がふいっと顔を逸らしたので話題を変えた。
「幸村さんはどうしてるかなあ?」
「無事に決まっているだろう」
「おう、三成!」
遠くから親しげに声をかけてきながら歩み寄ってくるのは、先程会った秀吉だった。
すかさず膝をついた三成に続いて慌てて桃も正座しては顔を見ないようにした。
「茶々が桃姫にまた会いたいと言うておるから明日連れて来るが良いぞ!おぬしは今日はもう帰ってよい」
「はい」
ひたすらだんまりを決めていた桃の前に秀吉が立つ気配がした。
「そなたの妻でなければ…儂の側室にしても…」
「私の罵声を浴びたくなくば今すぐお戻りを」
敢えてきつい言葉を選んで話す三成の性格を熟知している秀吉はまたもや這う這うの態で後ずさりした。
「こ、輿を用意してやったからそれで帰るが良いぞ。三成…この助平が!」
にやにや笑いながら去って行った秀吉を見送った後桃がようやく口を開いた。
「助平?」
「なっ何でもない!行くぞ」
広すぎる中庭にはすでに輿の担ぎ手が二人待っていて、足袋が汚れないようにと桃の両脇を抱えて身体を抱き上げた。
「わっ」
桃はいきなりのお姫様抱っこに驚き、三成はあまりにも軽い桃の身体と唇が触れ合いそうな距離に、思わず…
その可憐な唇を奪ってしまいそうになった。
「わあっお姫様抱っこ!」
一人浮かれているのは桃で、外見がいくら変わったとしても無邪気で明るいその様子に…三成は微笑んだ。
――担ぎ手の二人が亡霊でも見たかのようにして驚いていたのを見た三成は慌てて表情を引き締めて桃を輿の中へと入れた。
「このままでは俺の威厳が…」
既に威厳どころではなくなっていた。
桃は黒毛の馬の前で裾を太股まで捲ってみせた。
「!!」
「これなら乗れるでしょ?」
今にも怒られそうな気配を察した桃は捲るのを止めて中腰で座り込んだ。
「てか制服返してもらってないよ。帰る時に着て帰らなきゃ」
…当たり前のことを言ったのだが、三成がふいっと顔を逸らしたので話題を変えた。
「幸村さんはどうしてるかなあ?」
「無事に決まっているだろう」
「おう、三成!」
遠くから親しげに声をかけてきながら歩み寄ってくるのは、先程会った秀吉だった。
すかさず膝をついた三成に続いて慌てて桃も正座しては顔を見ないようにした。
「茶々が桃姫にまた会いたいと言うておるから明日連れて来るが良いぞ!おぬしは今日はもう帰ってよい」
「はい」
ひたすらだんまりを決めていた桃の前に秀吉が立つ気配がした。
「そなたの妻でなければ…儂の側室にしても…」
「私の罵声を浴びたくなくば今すぐお戻りを」
敢えてきつい言葉を選んで話す三成の性格を熟知している秀吉はまたもや這う這うの態で後ずさりした。
「こ、輿を用意してやったからそれで帰るが良いぞ。三成…この助平が!」
にやにや笑いながら去って行った秀吉を見送った後桃がようやく口を開いた。
「助平?」
「なっ何でもない!行くぞ」
広すぎる中庭にはすでに輿の担ぎ手が二人待っていて、足袋が汚れないようにと桃の両脇を抱えて身体を抱き上げた。
「わっ」
桃はいきなりのお姫様抱っこに驚き、三成はあまりにも軽い桃の身体と唇が触れ合いそうな距離に、思わず…
その可憐な唇を奪ってしまいそうになった。
「わあっお姫様抱っこ!」
一人浮かれているのは桃で、外見がいくら変わったとしても無邪気で明るいその様子に…三成は微笑んだ。
――担ぎ手の二人が亡霊でも見たかのようにして驚いていたのを見た三成は慌てて表情を引き締めて桃を輿の中へと入れた。
「このままでは俺の威厳が…」
既に威厳どころではなくなっていた。