優しい手①~戦国:石田三成~【完】
官兵衛と秀吉、そして幸村は、失神したままの三成の床を替えるために一度ゆっくりを皆で身体を持ち上げると、真新しい清潔な横に横たわらせた。
「よく耐えました。痛みで憤死する者も多いほどの激痛だったはずです。今宵は寝ずの番を」
「拙者がお傍についています」
顔面蒼白の三成の傍らににじり寄って座りなおすと、秀吉が幸村の手を強く握って来て、驚いて顔を上げた。
「真田殿…よくここまで三成を連れて来てくれた。こ奴が握りしめて離さなかった文、ありがたく読ませてもらう。儂は今から正則を捜して…討つ」
冷ややかな無表情になり、天下を統一するであろう秀吉の顔は…冷酷な鬼のものに変わっていた。
「…才蔵」
「はっ」
また屋根上から声が聴こえ、秀吉と官兵衛が驚いている中、幸村は三成に目を遣ったまま、命令した。
「福島正則を捜し、引きずり出して来い。拙者が討つ。秀吉殿…よろしいでしょうか」
「うむ。怒りで今宵は眠れそうにない。真田殿、頼んだぞ」
才蔵の気配が消え、再び秀吉を見つめて、今後を問うた。
「秀吉殿は如何なされるのですか?三成殿はここから動かせませぬ」
「輿を用意する。…信長様は恐らく怒り心頭じゃろうが、それは儂も同じ。それに信長様は今やこの関が原まで来れたことこそが奇跡のように御身が弱っておられる。大阪城までは乗り込んでは来ぬじゃろう」
「かたじけない…。拙者もご一緒したいのですが」
「うむ。このこと、謙信公には内密にしておいてくれ。三成が再び元気になり、その脚で越後まで行かせて驚かせてやりたいからのう」
ようやくからからと笑い、幸村を少し笑ませながらも、秀吉は肩を落とした。
「儂も桃姫に会いたいのう…。こ奴と桃姫の祝言には必ず儂も参列する。幸村殿、桃姫のことと桃姫の親御のこと…道中聞かせてもらうがよいか?」
「…はい。信長公の非道、あなた様には堪えるでしょうが、最後までお聞きくださいませ」
――夢現に、2人の会話が聴こえていた。
「も、も…」
「三成殿…傷が癒えるまで、大阪城にて匿って頂きます。どうかご辛抱を」
「も、も…」
何度も呟いた。
「よく耐えました。痛みで憤死する者も多いほどの激痛だったはずです。今宵は寝ずの番を」
「拙者がお傍についています」
顔面蒼白の三成の傍らににじり寄って座りなおすと、秀吉が幸村の手を強く握って来て、驚いて顔を上げた。
「真田殿…よくここまで三成を連れて来てくれた。こ奴が握りしめて離さなかった文、ありがたく読ませてもらう。儂は今から正則を捜して…討つ」
冷ややかな無表情になり、天下を統一するであろう秀吉の顔は…冷酷な鬼のものに変わっていた。
「…才蔵」
「はっ」
また屋根上から声が聴こえ、秀吉と官兵衛が驚いている中、幸村は三成に目を遣ったまま、命令した。
「福島正則を捜し、引きずり出して来い。拙者が討つ。秀吉殿…よろしいでしょうか」
「うむ。怒りで今宵は眠れそうにない。真田殿、頼んだぞ」
才蔵の気配が消え、再び秀吉を見つめて、今後を問うた。
「秀吉殿は如何なされるのですか?三成殿はここから動かせませぬ」
「輿を用意する。…信長様は恐らく怒り心頭じゃろうが、それは儂も同じ。それに信長様は今やこの関が原まで来れたことこそが奇跡のように御身が弱っておられる。大阪城までは乗り込んでは来ぬじゃろう」
「かたじけない…。拙者もご一緒したいのですが」
「うむ。このこと、謙信公には内密にしておいてくれ。三成が再び元気になり、その脚で越後まで行かせて驚かせてやりたいからのう」
ようやくからからと笑い、幸村を少し笑ませながらも、秀吉は肩を落とした。
「儂も桃姫に会いたいのう…。こ奴と桃姫の祝言には必ず儂も参列する。幸村殿、桃姫のことと桃姫の親御のこと…道中聞かせてもらうがよいか?」
「…はい。信長公の非道、あなた様には堪えるでしょうが、最後までお聞きくださいませ」
――夢現に、2人の会話が聴こえていた。
「も、も…」
「三成殿…傷が癒えるまで、大阪城にて匿って頂きます。どうかご辛抱を」
「も、も…」
何度も呟いた。