優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「謙信公とは、どのようなお方なのですか?」
大山と幸村、利休と茶々は別室に移り、終始暗い雰囲気の中ようやく茶々がそう口にして、それに幸村は言葉に詰まりながら答えた。
「義に溢れた美しきお方です。敵だった者も懐に入れて守り…実は尾張まで謙信公は桃姫をお迎えに来ておられました」
「え…」
「毘沙門天からの啓示があったとかで、あんなに情熱的な殿を見たのははじめてのこと。ですが…三成殿は、桃姫と夜伽を…」
――茶々と大山の顔色が変わった。
大山の顔色は歓喜に溢れ…茶々の顔色は…暗くなり…
緋色の打掛を着た茶々の表情は長い髪で隠れて、利休が瞳を伏せる。
「そう、ですか…。桃姫と夜伽を…」
「関が原へ出立する直前のことでした。織田信長の元に桃姫の親御が捕らわれていることを知り、一番隊の秀吉公をお味方に引き入れるために本陣へと向かう際、三成殿は…」
拳が真っ白になるほど握りしめて、大山がそんな幸村を労わるように何度も肩を叩く。
「お命が助かってよかった…。傷が癒えたら再び越後へと向かうでしょう。幸村殿…頼みました」
「お任せください」
沈黙が訪れ、それぞれが三成と桃のことを想い、今後一体どうなってしまうのかを考えて、沈んでしまう。
――そんな中…
「幸村様、福島正則を捕えました」
「そうか。連れて来い」
三成に太刀傷を負わせた男を捕えた才蔵が姿を現し、猿轡を噛ませて手足を縛られて蓑虫のような状態になった正則を部屋の隅へと投げ入れる。
「む、ぐ…っ」
「貴様…よくも三成殿を…!」
ふつふつと怒りが込み上げて、愛用の三本槍を手にゆらりと立ち上がる。
鬼神が目覚め、身体から殺気が噴き出る幸村に恐れをなした茶々が後ずさりをした。
秀吉の追っ手から逃げ続けてきた正則はぼろぼろで、いつも勝気で粗暴な顔には恐れの色しか浮かんでいない。
「まずは秀吉公がお前に一太刀浴びせる。あとは…俺がやる」
ぼそりと耳元で低く囁いた幸村の瞳は、昏い炎で滾っていた。
「三成殿が桃姫を忘れる原因となった貴様を絶対に許さぬ…」
正則の死を鬼神が望む。
大山と幸村、利休と茶々は別室に移り、終始暗い雰囲気の中ようやく茶々がそう口にして、それに幸村は言葉に詰まりながら答えた。
「義に溢れた美しきお方です。敵だった者も懐に入れて守り…実は尾張まで謙信公は桃姫をお迎えに来ておられました」
「え…」
「毘沙門天からの啓示があったとかで、あんなに情熱的な殿を見たのははじめてのこと。ですが…三成殿は、桃姫と夜伽を…」
――茶々と大山の顔色が変わった。
大山の顔色は歓喜に溢れ…茶々の顔色は…暗くなり…
緋色の打掛を着た茶々の表情は長い髪で隠れて、利休が瞳を伏せる。
「そう、ですか…。桃姫と夜伽を…」
「関が原へ出立する直前のことでした。織田信長の元に桃姫の親御が捕らわれていることを知り、一番隊の秀吉公をお味方に引き入れるために本陣へと向かう際、三成殿は…」
拳が真っ白になるほど握りしめて、大山がそんな幸村を労わるように何度も肩を叩く。
「お命が助かってよかった…。傷が癒えたら再び越後へと向かうでしょう。幸村殿…頼みました」
「お任せください」
沈黙が訪れ、それぞれが三成と桃のことを想い、今後一体どうなってしまうのかを考えて、沈んでしまう。
――そんな中…
「幸村様、福島正則を捕えました」
「そうか。連れて来い」
三成に太刀傷を負わせた男を捕えた才蔵が姿を現し、猿轡を噛ませて手足を縛られて蓑虫のような状態になった正則を部屋の隅へと投げ入れる。
「む、ぐ…っ」
「貴様…よくも三成殿を…!」
ふつふつと怒りが込み上げて、愛用の三本槍を手にゆらりと立ち上がる。
鬼神が目覚め、身体から殺気が噴き出る幸村に恐れをなした茶々が後ずさりをした。
秀吉の追っ手から逃げ続けてきた正則はぼろぼろで、いつも勝気で粗暴な顔には恐れの色しか浮かんでいない。
「まずは秀吉公がお前に一太刀浴びせる。あとは…俺がやる」
ぼそりと耳元で低く囁いた幸村の瞳は、昏い炎で滾っていた。
「三成殿が桃姫を忘れる原因となった貴様を絶対に許さぬ…」
正則の死を鬼神が望む。