優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「泣くな…泣くな!」


本当はこんな知らない時代に一人飛ばされて…怖かった。


だがオーパーツを回収しないと元の時代に帰れないし、それに思っている以上に歴史が狂っている。


――けれど…


三成の胸の中はあたたかくて、背中に回された手は…優しかった。


「…ぅ…っ、……っく…」


「すまぬ…そなたに無理強いをしてしまった。桃…泣き止んでくれ、でないと…俺も悲しい」


「ごめ…ごめんなさい…」


子供をあやすように頭を撫でてくれる優しい手。


歴史では… この石田三成という武将の最期は、打ち首。

徳川家康によって処刑されてしまうが、遺した一句はその心の気高さ、孤高さを語り継がれている。


「ほんとは…怖かったの。知ってる人知らないし…三成さんが居なかったら、私…っ」


次々と弱音が出てきてしまうのが不思議なほどに三成には全てをさらけ出すことができてしまう。


皆は怖いと言うが、自分にとってはとても優しい人。


「…そなたの探しているものが見つかるまでここに居ろ。俺が…傍に居てやる」


優しい言葉に、つい胸に頬を擦り寄せると、びくっと三成の身体が引き攣った。


「?三成さ…」


「…何でもない!」


顔を見られたくないのか強く胸に顔を押し付けられたので、桃はそのまま三成に体重を預けた。


「…顔、真っ赤だよ?」


「!み、見たのか?」


「見たんじゃないもん、見えたんだもん。それに…心臓の音がすご…」


少しからかっただけなのに、照れ隠しなのか三成が少し強く胸で押してきて、完全に力を抜いていた桃はそのまま倒れ込んだ。


…三成の服を掴んだまま。


「!」


「…やっ!」


――女所帯で育った桃にとって、男に覆い被さられたのはこれがはじめてだった。


身体の重みをリアルに感じ、胸元から覗く細く鍛えた身体が見えて思わず両手で顔を覆う。


「す、すまぬ!」


慌てて身体を起こした三成だったが…心臓はうるさいほどに高鳴っていた。


もしこのまま抱いてしまっていたら…桃は元の時代に帰らずに居てくれるのだろうか?


――想いが高まる。
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