優しい手①~戦国:石田三成~【完】
秀吉の子飼いの一人だった福島正則が中庭に転がされ、それを秀吉が冷めた目で見つめ、鼻を鳴らした。
「何ぞ言い訳でもあるのか?最期に聞いてやるぞ」
仲間殺し――
秀吉が到着する前、すでに正則が三成を斬ったことは皆に知れ渡っていて、正則は皆に蹴ったり殴られたりの暴行を受け、立ち上がる気力すらなかった。
そんな正則の猿轡を外したのは、幸村だった。
「ひ、秀吉様…」
「三成の命は助かった。じゃがおぬしは助からぬ。そこの鬼神が命を狙っておるぞ」
「ひぃ…っ」
――幸村は精神統一をしているかのように瞳を閉じていた。
だがその身体からは炎が噴き出ていて、その場に居た誰もが震えあがる。
一騎当千の真田幸村――
三成はそんな男と行動と共にしていたのだ。
「せ、拙者は…三成が我々を裏切ったのかと…!」
「三成に限ってはそれはない。おぬしも清正も全く三成を理解しておらなんだ。さあ、もう逝け。最期に儂も一太刀斬らせてもらうぞ」
普段は好々爺の表情だが、今は冷徹な顔をして、鞘から刀を抜く。
恐怖のあまり正則は後ずさりしながら、まくし立てる。
「み、三成は文治の者!拙者や清正は武断の者!殿!殿の地位を確固たるものにしたのは我ら武断派が居たからこそ!何故三成の肩を持つのですか!?」
「…儂の地位が、武断派が居たからこそ、だと…?」
今度は秀吉の小さな身体から殺気が噴き出て、大音声が中庭に響いた。
「国を思うておったのは三成ただ一人!おぬしらは戦ばかりに明け暮れて民を思い遣らぬ!ああ…儂は馬鹿だった。おぬしや清正を傍に置いたのは、間違いじゃった…」
「殿…、ぐぁっ!」
袈裟懸けに正則の身体を切り裂き、血が噴き出る。
それは三成の身体についた太刀傷と全く同じもので、次に幸村がうずくまる正則の前に立ち、鬼神が笑った。
「三成殿の苦しみを思い知れ。清正と同じ地獄へ行き、手を取り合って閻魔の沙汰を受けるがいい」
――正則にもう抵抗する力は残っていなかった。
「俺は…殿のために今まで…」
もう見向きもしない君主。
幸村の一閃が、正則を切り裂いた。
「何ぞ言い訳でもあるのか?最期に聞いてやるぞ」
仲間殺し――
秀吉が到着する前、すでに正則が三成を斬ったことは皆に知れ渡っていて、正則は皆に蹴ったり殴られたりの暴行を受け、立ち上がる気力すらなかった。
そんな正則の猿轡を外したのは、幸村だった。
「ひ、秀吉様…」
「三成の命は助かった。じゃがおぬしは助からぬ。そこの鬼神が命を狙っておるぞ」
「ひぃ…っ」
――幸村は精神統一をしているかのように瞳を閉じていた。
だがその身体からは炎が噴き出ていて、その場に居た誰もが震えあがる。
一騎当千の真田幸村――
三成はそんな男と行動と共にしていたのだ。
「せ、拙者は…三成が我々を裏切ったのかと…!」
「三成に限ってはそれはない。おぬしも清正も全く三成を理解しておらなんだ。さあ、もう逝け。最期に儂も一太刀斬らせてもらうぞ」
普段は好々爺の表情だが、今は冷徹な顔をして、鞘から刀を抜く。
恐怖のあまり正則は後ずさりしながら、まくし立てる。
「み、三成は文治の者!拙者や清正は武断の者!殿!殿の地位を確固たるものにしたのは我ら武断派が居たからこそ!何故三成の肩を持つのですか!?」
「…儂の地位が、武断派が居たからこそ、だと…?」
今度は秀吉の小さな身体から殺気が噴き出て、大音声が中庭に響いた。
「国を思うておったのは三成ただ一人!おぬしらは戦ばかりに明け暮れて民を思い遣らぬ!ああ…儂は馬鹿だった。おぬしや清正を傍に置いたのは、間違いじゃった…」
「殿…、ぐぁっ!」
袈裟懸けに正則の身体を切り裂き、血が噴き出る。
それは三成の身体についた太刀傷と全く同じもので、次に幸村がうずくまる正則の前に立ち、鬼神が笑った。
「三成殿の苦しみを思い知れ。清正と同じ地獄へ行き、手を取り合って閻魔の沙汰を受けるがいい」
――正則にもう抵抗する力は残っていなかった。
「俺は…殿のために今まで…」
もう見向きもしない君主。
幸村の一閃が、正則を切り裂いた。