優しい手①~戦国:石田三成~【完】
汗が頬を伝い、腕を伝う。


元々綺麗な男なのに、自分を今抱いている男…謙信は、もっともっと綺麗に見えた。


「謙信さ、ん…、汗が…すごい…」


「うん、すごい、ね…。戦でも、こんなに汗はかかないよ…」


桃の身体のあちこちには唇の痕が花弁のように散らされていた。


「これを見る男はもう居ないから…いいよね?見える所にも、つけていい?」


「だ、め…!みんなに、からかわれちゃうから…」


謙信の腕を解いて横向きになって背を向けると、うなじに唇が這い、息が上がった。


「桃も汗がすごいよ。一緒に湯に入ろうか?身体を洗ってあげるよ」


「そんなこと言って…またエッチなことする気でしょ?」


「あれ、なんでばれてるのかな。桃…」


耳元で、謙信が甘く低い声で囁く。


最も言いたかった言葉を――



「君を私の正室に迎えたい。…駄目かな?私は失格?」


「………はい。よろしく、お願いします…」


「え…、今なんて…」



まさか了承をもらえるとは思っていなかった謙信が身体を起こし、桃の肩を引いて向い合せた。


少し垂れた瞳が驚きに見開かれて、桃はそんな謙信の表情を見て少し吹き出しながら、もう1度繰り返す。


「謙信さんの正室に…。絶対、幸せにしてね…?」


「桃…!」


――元々からして信長が生きていたこと自体、それは桃のせいではなく、この時代に来た時から、歴史は狂っていたのだ。


だからもう、悔やまない。


「謙信さんは本当は生涯独身なんだよ。正室なんて迎えていいの?」


「そうだね、君に出会うまでは正室とか女子とか興味なかったのは事実だよ。私には毘沙門天が居ればいい。ずっとそう思ってたけど…」


互いの汗で互いの身体が濡れて、それでも謙信は桃を抱きしめて、


頬に耳に、瞼に唇に、口づけを落とす。


「桃…決断してくれてありがとう。君を生涯必ず幸せにしてみせるからね」


「うん、長生きしてね。だからお酒はあんまり飲んじゃヤだよ」


「ふふ、祝言を挙げる前から小言?私を尻に敷くつもりなのかな、これは手ごわそうだ」


――そしてまた身体を重ねる。
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