優しい手①~戦国:石田三成~【完】
夜明け前に目覚めた時…謙信は珍しく、眠っていた。
特別な姿を見れたことが嬉しくて、いつもとは逆の立場になって、謙信の白皙の頬に触れた。
「…こら」
「あ、ごめんなさい…起こしちゃった?」
「君が私を張り切らせるから体力を使い果たしちゃったよ。でももう大丈夫。…また、する?」
「だ、駄目!やだ、謙信さ…ん………ん…」
優しく唇が重なり合い、舌の動きに陶酔してしまって結局は謙信の思うが儘。
「…三成の生死は今後も調べるよ。君にずっと笑っていてもらいたいんだ。ずっと私の隣で」
「ありがと…。でももう…いいの。私はこの時代で、謙信さんと生きてく。幸せにしてくれるんでしょ?」
――何故かそこで謙信の顔が真顔になった。
驚いて見つめていると、身体を起こし、机の上に置いていた文のようなものを差し出した。
「これは関ヶ原に出立した時、三成から預かった桃宛ての手紙だよ。私は内容は知らないけど、知らないままの方がいいから言わなくてもいいよ」
「…みつ、なりさんが…私に…?」
声の震えた桃を一人部屋に残し、謙信が去って行く。
裸のまま正座して、がたがたと指が震えるのをなんとか抑え込みながら、ゆっくりと開いた。
――達筆すぎる字。
桃もこの時代で多少勉強をして、時間をかけて読めるようにはなっていたが…その潔癖さがうかがえる真っ直ぐな字で、桃の心を打った。
「三成さん…!」
『愛しの桃へ――
俺がもし帰って来なかった場合は謙信の正室に。
俺がもし無事に帰ってきた場合は、俺の妻に。
例え離れている時間が長くとも、愛している。
永久に―― 』
――文がくしゃりと折れ曲がる。
桃は…声を押し殺して、泣いた。
「三成さん…っ、私……三成さんの言うとおりに、します…」
謙信の正室に。
三成は、もう忘れなくてはいけない男。
「三成さん…!」
そうわかっていても、恋慕は止められない。
――あの不器用な笑顔。
不器用な言葉。
優しかった、手――
全てがまだ、忘れられずにいる。
特別な姿を見れたことが嬉しくて、いつもとは逆の立場になって、謙信の白皙の頬に触れた。
「…こら」
「あ、ごめんなさい…起こしちゃった?」
「君が私を張り切らせるから体力を使い果たしちゃったよ。でももう大丈夫。…また、する?」
「だ、駄目!やだ、謙信さ…ん………ん…」
優しく唇が重なり合い、舌の動きに陶酔してしまって結局は謙信の思うが儘。
「…三成の生死は今後も調べるよ。君にずっと笑っていてもらいたいんだ。ずっと私の隣で」
「ありがと…。でももう…いいの。私はこの時代で、謙信さんと生きてく。幸せにしてくれるんでしょ?」
――何故かそこで謙信の顔が真顔になった。
驚いて見つめていると、身体を起こし、机の上に置いていた文のようなものを差し出した。
「これは関ヶ原に出立した時、三成から預かった桃宛ての手紙だよ。私は内容は知らないけど、知らないままの方がいいから言わなくてもいいよ」
「…みつ、なりさんが…私に…?」
声の震えた桃を一人部屋に残し、謙信が去って行く。
裸のまま正座して、がたがたと指が震えるのをなんとか抑え込みながら、ゆっくりと開いた。
――達筆すぎる字。
桃もこの時代で多少勉強をして、時間をかけて読めるようにはなっていたが…その潔癖さがうかがえる真っ直ぐな字で、桃の心を打った。
「三成さん…!」
『愛しの桃へ――
俺がもし帰って来なかった場合は謙信の正室に。
俺がもし無事に帰ってきた場合は、俺の妻に。
例え離れている時間が長くとも、愛している。
永久に―― 』
――文がくしゃりと折れ曲がる。
桃は…声を押し殺して、泣いた。
「三成さん…っ、私……三成さんの言うとおりに、します…」
謙信の正室に。
三成は、もう忘れなくてはいけない男。
「三成さん…!」
そうわかっていても、恋慕は止められない。
――あの不器用な笑顔。
不器用な言葉。
優しかった、手――
全てがまだ、忘れられずにいる。