優しい手①~戦国:石田三成~【完】
綺麗さっぱりになって、桃が大広間の襖を開けた時…


「桃姫様!」


「夜叉姫様!!!」


「え…」


大広間には50人以上の家臣や重臣が集まっており、桃が固まっていると…


「桃、こっちへおいで」


「謙信さん…」


――再びセーラー服を着た桃は皆の視線を一心に集めながらも上座の謙信の隣に座り、肩を抱かれた。


「皆には君が正室に入ってくれることを伝えたところだよ。君からも皆に何か言ってあげて」


「え、えと…」


今か今かと待ち受けている武将たちを前になかなか言葉が出て来ずにあわあわしていると、謙信が耳元でこそりと囁いた。


「“私は謙信様に夢中です”って言ったら?」


「も、もうっ!」


くすくすと笑い、相変わらず安らぎと癒しを与えてくれる謙信に感謝しながら、ようやく口を開いた。


「私はこの時代の人間じゃないけど、ここに留まる決意をしました。だからその…謙信さんの…お、お、奥さんに…なり、ます…」


「おぉーーーっ!」


大広間が揺れる。


最も喜んでくれたのは兼続、景勝、景虎で、上座ににじり寄って次々と桃の手を握った。


「誠におめでたく存じます!早く御子をお生みになり、上杉家を今以上に発展させましょう!」


「こ、子供なんてまだまだ先だよ」


「そうかな?すぐにできると思うんだけど」


謙信が笑い、兼続が手を叩くと襖が開いて次々と膳が運び込まれる。


朝餉の時間だと知った桃が目を輝かせているのを見てまた皆が笑い、桃をからかった。


「桃姫様はほんに食道楽であらせられる。拙者の分もいかがですか?」


長秀がそうからかいながらも笑顔が張り付いて離れず、いつも以上に話しかけてくれる皆に桃も嬉しくなりながら謙信と顔を見合わせた。


「桃、これからは皆は君の子も同じ。私と君の子だ。慈しみ、時には悩みを聞いて分かち合うんだよ。そうして絆は強くなっていくからね」


「はい。謙信さん、私、わからないことだらけだから色々教えてね?」


「大丈夫、なんにも心配しないで。君は、私のことだけ考えていればいいんだよ」


甘い言葉――

嬉しくなって、頷いた。
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