優しい手①~戦国:石田三成~【完】
ずぶ濡れで戻って来た桃と三成を見て、清野や幸村が慌てて髪を拭いてやり、温かい茶を淹れて桃の身体を温めてやる。
「おやおや、どうしたの?もう水遊びは季節じゃないよ?」
利休と密談をしていた謙信が桃が戻ったと聞いて部屋に顔を出しに来て、頬を膨らませて熱い茶を冷ましている桃の隣に座り、隅に座っていた三成が頭を下げた。
「俺の不注意で…」
「違うよ、クロちゃんが急に暴れたの。今日ご飯抜きだから厩番の人にそう言っておいてね」
「ふふ、それは堪える仕置きだね。積もる話は話せたかい?」
「いや…俺はまだ何も思い出せておらぬ故」
「そっか、まあ時間はたっぷりあるからね。さあ桃、ちょうど身体を温めたかったんだ、一緒に入ろう」
「え、ちょ、ちょっと謙信さ…」
強引に抱き上げて、けれど顔は柔和そのもの。
途中、謙信の姉の仙桃院とすれ違い、苦笑しながら桃に頭を下げた。
「祝言を行うと聞いて参上いたしましたが…お話は後ほどで結構ですよ」
「そうしてもらえると助かりますよ姉上」
――謙信の首に縋り付きながら、廊下に出てこちらをずっと見ている三成と視線が合う。
…どこか悔しそうな顔をしていた。
記憶がないのに、謙信に攫われて行く自分のことを想ってくれているような気がした。
「謙信さん…あの人…やっぱり三成さんなのかな」
「そうだと思うけど、君は三成が許せないだけなんでしょ?忘れられたことが悔しい?」
図星を突かれて胸が痛んだ。
本来こうして問い質してくる男ではないので、謙信もまた三成との関係を気にしていることが窺えた。
「…うん。でもいいの。私は謙信さんと…」
「思い込みはいけない。私を逃げ口にされるのは心外だ。そんな気持ちでいるのなら、三成の元に戻った方がいい」
「け、謙信さん…!?」
冷たく突き放されて、謙信と出会った時のことを思い出した。
――そうだ、この男は慰めてくれるような男ではない。
優しいけれど、義に則っていないことには絶対に口出しをしない男なのだ。
「謙信さん…」
「まあ、とにかく風呂に入ろう」
にこり。
「おやおや、どうしたの?もう水遊びは季節じゃないよ?」
利休と密談をしていた謙信が桃が戻ったと聞いて部屋に顔を出しに来て、頬を膨らませて熱い茶を冷ましている桃の隣に座り、隅に座っていた三成が頭を下げた。
「俺の不注意で…」
「違うよ、クロちゃんが急に暴れたの。今日ご飯抜きだから厩番の人にそう言っておいてね」
「ふふ、それは堪える仕置きだね。積もる話は話せたかい?」
「いや…俺はまだ何も思い出せておらぬ故」
「そっか、まあ時間はたっぷりあるからね。さあ桃、ちょうど身体を温めたかったんだ、一緒に入ろう」
「え、ちょ、ちょっと謙信さ…」
強引に抱き上げて、けれど顔は柔和そのもの。
途中、謙信の姉の仙桃院とすれ違い、苦笑しながら桃に頭を下げた。
「祝言を行うと聞いて参上いたしましたが…お話は後ほどで結構ですよ」
「そうしてもらえると助かりますよ姉上」
――謙信の首に縋り付きながら、廊下に出てこちらをずっと見ている三成と視線が合う。
…どこか悔しそうな顔をしていた。
記憶がないのに、謙信に攫われて行く自分のことを想ってくれているような気がした。
「謙信さん…あの人…やっぱり三成さんなのかな」
「そうだと思うけど、君は三成が許せないだけなんでしょ?忘れられたことが悔しい?」
図星を突かれて胸が痛んだ。
本来こうして問い質してくる男ではないので、謙信もまた三成との関係を気にしていることが窺えた。
「…うん。でもいいの。私は謙信さんと…」
「思い込みはいけない。私を逃げ口にされるのは心外だ。そんな気持ちでいるのなら、三成の元に戻った方がいい」
「け、謙信さん…!?」
冷たく突き放されて、謙信と出会った時のことを思い出した。
――そうだ、この男は慰めてくれるような男ではない。
優しいけれど、義に則っていないことには絶対に口出しをしない男なのだ。
「謙信さん…」
「まあ、とにかく風呂に入ろう」
にこり。