優しい手①~戦国:石田三成~【完】
はじめてのキス――それは三成によって奪われた。


「や、三成さ…っ」


「そなたの唇は…甘いな。もっと俺をとろけさせてくれ…」


腰に腕をがっしり回されて、しかも顎を取られ、逃げる術は全くない。


何度も何度も唇が重なってきては唇を舐められて、桃は思わず声を上げた。


「ん…っ」


「桃…少し、口を開いて…」


はじめての唇の感触…やわらかく、あたたかく、そして気持ちよかった。


――三成にそう言われなくても自然と唇が緩み、その間から三成の舌が割って入ってきた。


「ん…、んっ!」


至近距離にある三成の顔。

目を閉じ、何度も角度を変えては桃をとろけさせ、抵抗する意思を奪っていくそのキス――


そしてついに帯に手がかかった。


「だ、駄目、三成さん、駄目!」


「…俺のことが…嫌いか?」


――そうではない。

あまりに突然のことだったし、そして三成は明らかに酒に酔っている。

これが…衝動的なもので、相手が誰でもいいのなら…頑として拒絶しなければならない。


…三成に至ってそれはないだろうが、それでも桃にとってファーストキスを奪われたこと、そして…


三成にそうされることを本気で“いやだ”と思わなかったことに、桃自身も動揺していた。


「嫌いじゃないよ…、でも、駄目…っ、キスもはじめてだったのに…っ」


僅かに三成が身体を起こす。
こつんと額に額をあててきてまた小さくキスをしてきた。


「きす…?口づけのことか?桃…そなたはしたことが…なかったのか?」


「…うん」


消え入るような声で返事をした時…三成が嬉しそうに笑った。


「そうか。では俺がそなたの“はじめての男”なのだな」


そしてまた有無を言わさぬ強引さで唇が重なり、舌を差し込まれては跳ねる桃の身体を三成の手が這う。


優しいその手の動きにまた翻弄されながらも桃は帯にかかるもう片方の手を遮った。


「駄目だよ三成さん!駄目…っ」


「そなたを抱きたい。離れていくな、桃…!」


帯が解かれてゆく。


白い肩、白い胸が見えた時、三成は自身を抑制することを止めた。
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