優しい手①~戦国:石田三成~【完】
ものすごいスピードで記憶が蘇っていく。

…桃もまた、三成との思い出が呼び起こされて…


だけど、応えられない。

このまま三成と一緒に居ると…とても危険な展開に陥りかねない。


「ん、ん……っ」


また魂を揺さぶられるようなキスをされて、三成の唇からも声が漏れた。

それがとても色っぽく、最後の抵抗に…


「つ…っ」


「…ごめんなさい。私、行くね」


…唇を噛み切られた三成が桃を呼び止めようとしたが、その時はもう部屋から居なくなっていた。


「…諦めぬ。そなたを愛しく想うばかりだ…桃…」


呟き、人目を憚って桃の部屋から抜け出た。


――その頃、桃は謙信の寝ている部屋に駆け込み、肩で息をしていた。


「謙信さん…寝ちゃってるの?」


惰眠を貪るのが大好きな軍神上杉謙信。

ものすごく強いのに刀の稽古をしている姿は1度も見たことがなく、いつものんびりしている。

今も掛け布団を着て丸まって、寝息を立てていた。


「もう…子供みたいなんだから」


傍らに座って息を整えていると、白く長い指先が膝に触れてきた。


「また三成と居たの?妬けるなあ、私をいじめて楽しんでいるね?」


「そ、そんなことな…、きゃっ」


ぐい、と腕を引かれて胸の中に抱きしめられると、ふわりと乳香の香がして反射的に抱き着く。


「いい匂い…」


「唇に血がついてるよ。誰のかな」


指で拭われて、顔色の変わった桃は…嘘をつくことができなかった。


「…三成さんが…」


「噛み切ってきたの?正解だけど、私からもちょっと三成をやり込めてこようかな」


「だ、駄目!駄目だよ、ごめんなさい、私が気を抜いてたから…」


緩んだ胸元から白く鍛えられた胸が覗いて、また近距離で謙信の薄い唇の口角が上がるのが見えた。


「本来なら私が君を追う立場だった。だけどもう君を離しはしないよ、私の全てを知って…君の全てを見てしまったからね」


「謙信さん…ん…」


余韻の残るやわらかい口付けの後、突如として激しいものに変わる。

桃の様子を見ながら、緩急をつけてくる。


それが、謙信のキス。
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