優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信の熱い息が耳にかかって、

声を上げる桃にどんどん気が昂っていって、普段穏やかで優しいはずの謙信は少し乱暴な気分になって白い肌に見入った。


「白くて綺麗だ。…三成に触られたのはここだけ?…ここは?」


謙信があちこちに触れてきて、桃はぎゅうっと瞳を閉じてなんとかそれを堪えた。


「謙信さ…っ」


「そう、気持ちいい?私も気持ちよくなりたいんだけど…三成とはそういうことしてないんだよね?だったら駄目だね」


謙信は義を重んじる。

三成も同じ位に義を尊重する男だが、桃は三成に抱かれていないので、謙信から抱かれるわけにはいかない。


…が、袖を握った手は離れず、震える瞳で謙信を見つめて、その意図を汲んだ謙信はふわりと微笑を浮かべた。


「…いいの?」


「…うん…。でも…三成さんとも…」


「私に黙っていればいいよ。最初にそう言ったのは私の方だからね」


――ゆっくりと覆い被さってきた重たい身体に、ふいに涙が溢れそうになる。


こうして愛されることの喜びを教えてくれたのは、三成と謙信。


特に謙信とは何かの縁で結ばれている気がしていて、こうやって身体を重ねる毎に毘沙門天に見守られている気がして、ゆっくりと重なった身体の感触に、魂が震えた。


「ん…っ」


「桃…、君が…愛しい…」


嬉しくて涙が零れそうになって、無我夢中で背中に腕を回した。


「君を離したくない。ずっと、私の傍に…居てほしい…」


耳元で囁かれて、謙信が苦しそうな表情を浮かべていて、両手で頬を包み込むと桃から唇を重ねた。


いつも笑わせてくれた優しい男。

どんな時も傍に居てくれて、愛してくれた男。


――だが、信長の軍勢はもうすぐそこまで来ている。

両親を取り戻したら、この優しい男たちから離れて日常に戻らなければならない。


…これが日常だったらいいのに。


「謙信さん…っ、好き…!」


「…うん…、私も、好きだよ…」


汗が頬にぽとりと落ちてきて、謙信と縺れ合いながら、夜空に浮かぶ月を見ていた。


止めどなく溢れる愛――


離れてしまえば…心が死んでしまうかもしれない――
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