優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「桃、どうしたのだ?様子がおかしいが」


先程からずっと黙ったまま城の回りを一周していた桃にようやく政宗が声をかけ、そしてずっと腹に手をあてたままなので、それも意味が分からず桃の手を引くと立ち止まらせた。


「腹が痛いのか?ならば部屋で休んでいた方が」


「…ううん、大丈夫。…ねえ政宗さん、聞いてもいい?」


「ああ、なんでも聞け」


池の前へ行くと鯉を眺めながら口を開け閉めして必死に言葉を捜し、そしてようやく1番聴きたいことを口にした。


「赤ちゃんができたら…嬉しい?」


「!!お、俺との子か!?」


「ば、馬鹿!政宗さんとエッチなんかしてないもん!」


控えていた幸村は会話を聞かないように努めていたが…急にそんなことを聞くのはおかしすぎる。

もしや、もしや…



「桃姫…?殿との御子が…?」


「………謙信さんとの赤ちゃんじゃないかも…」



――桃が頭を抱えてうずくまったので、隻眼に慌てた光を浮かべながら政宗が腕に抱えて立ち上がらせると、腹を圧迫しないようにそっと抱きしめた。


「…本当、なのか?」


「まだわかんない…。でももしかしたら…」


涙声になり、不安に胸が潰されそうになっている桃がぎゅっと抱き着いて来て、思わず駆け寄った幸村も桃の背中を撫でて、優しく諭した。


「とにかくお身体を労わって下さい。さあ、お部屋へ」


「でも…謙信さんと三成さんと顔を合わせられないよ…」


――顔を上げられないでいると…


「桃!」


「桃、捜したよ、早く横になって!」


「謙信さん…、三成さん…?」


今まで方々を捜し回り、ようやく桃を発見した三成と謙信が我先にと駆け寄ってきて、桃の肩を抱くと政宗から引き剥がした。


「おい、俺と桃姫の恋路を邪魔するな」


「そなたの戯言を聞いている暇はない。桃、歩けるか?」


驚いて顔を上げた桃が2人の顔を交互に見つめると、とにかく桃に触れたくて右手と左手をそれぞれが握った。


「まだ子が出来たかわからないにしろ安静にしていて。いいね?」


「そうだ。今は悩むな。とりあえず部屋へ」


2人の優しい手。
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