優しい手①~戦国:石田三成~【完】
別れの日までは、三成と謙信となるべくずっと一緒に居ようと決めていた。


なので軍議が終わるまで謙信を待っていたのだが、両親が救出されたと聞き、謙信は連合軍のばらばらな意見をまとめ上げるために、時間を要していた。


「謙信さん…遅いね」


「もう夜も更けた。そなたは寝た方がいいぞ」


「1人じゃやだってば!もうっ三成さんったらわざと言ってるでしょ?」


“お化けが怖いから一緒に寝て!”


桃にいつもそう言われて、堅物の自分が戸惑いながらそれを受け入れて共に眠った日々――


あれが近い未来、何よりも大切な思い出になる。


だから三成も不平を言わずに…むしろ内心喜びつつ一緒の床に入り、頬杖を突くと桃のやわらかい頬を引っ張った。


「相変らずだな」


「三成さんが記憶を無くしてた時は謙信さんが一緒に寝てくれたし…1人じゃ絶対に眠れないもん」


「…謙信は真に義に厚い男だと最近強く実感した。普通なら、俺が行方不明になったことに付け込んで、そなたを手に入れようするはずなのに、謙信は…」


「そだね、謙信さんはずっと待っててくれたの。私が三成さんと謙信さんのどっちかを選べない気持ち、わかってもらえた?」


「…少しだけ」


張り合うのはやめたといってもやはり対抗意識は完全に封じ込めることはできず、逆に桃から頬を引っ張られていると…


「ああ長かった…もう無理。もう頑張れない」


肩を揉みながらとぼとぼと歩み寄ってきた謙信が、頬を引っ張り合っている桃と三成を見て唇を尖らせた。


「私が頑張ってる時になにやってるのかな?」


「お、お疲れ様でしたっ!謙信さん、早くこっちこっち!」


「難しい話ばかりで身体が固まっちゃったよ」


隣に座った謙信の背後に回り込むと肩を揉んでやり、謙信の身体から乳香の良い香りがして、いつもこの香りに癒されている桃は思わず鼻を鳴らして謙信に笑われた。


「私を襲いたくなったのかな?」


「ち、違うよっ、やめてよ謙信さん!」


「桃を惑わせるな」


「冗談だよ冗談。相変わらず君は堅物だねえ」


砕けた謙信と堅物な三成。

2人と一緒に居る時こそが、至宝の時間。
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